秋桜

□サンチェン妃の手記
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テヒンの誕生日の宴から2ヵ月が経った、冬の朝、朝餉を食べたサンチェン妃は、低い引き出しから取り出した1冊の本を取り出した。

そして、それをじっと見つめてから、ユ尚宮を呼んで、テヒンとチジュンを連れてくるように指示をだした。


数刻のうちに、2人は母の部屋に集まった。

「皆が揃ったので、話を始めようと思います。よろしいですね?」

「「はい。」」

部屋にいるのは、サンチェン妃親子3人だけである。

「テヒンも成人皇族となり、これから貴方達2人は、先の未来について決めていかなければなりません。」

2人は、無言で話を聞く。

「まず、テヒン。」

サンチェン妃は厳しい顔で、テヒンを見る。

「貴女は、いずれそう遠くない未来に、王妃様のお生みになられたチョナン様と婚礼を挙げることになるでしょう。それは分かっておりますね?」

「はい…。」

テヒンはその先に待つ言葉が全く予想出来ずに、胸のざわめきが止まらなかった。

「貴女には、酷な事を言うようですが、貴女はいずれその命を狙われるでしょう。いいえ、必ずや狙われます。母はそれを知っています。」

サンチェン妃の言葉は、とても理解し難いものだった。
そして、サンチェン妃は、テヒンに1冊の本を手渡した。

「これは、母の手記です。ちょうど今のテヒンくらいの頃からの事を書き記しています。」

テヒンはその本を恐る恐る開けた。


『私の両親は、《巫女と宮司》だった。』……!?

「母上様…。これは何かの間違いでは…?母上様が、そんな…」

横から覗き見たチジュンも目を見開いた。

「誠なのですか、母上様。」

「誠であり、真実です。」

サンチェン妃の眼差しは、哀しくそして強いものだった。
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