G dream

□微睡んで
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(うーん、気持ちイイ)

王泥喜は休日を名無しさんの膝の上で満喫していた。お膝の提供者も初めは王泥喜に構ってくれたが、今は雑誌を開いている。本当はもう少しじゃれたい気持ちも無いわけではないが、その気持ちを抑えるくらい訳ない。

(なんせ明日も休みだからな)

王泥喜はずっとニヤケ顔だった。先程までは我慢していたが、今は雑誌のおかげでだらしない顔が名無しさんに見られることはない。
しかも今日は泊まってもいいと言われているのだ。

「今夜何食べようか?明日のご飯もあるから買い物にいかないとね」

急に雑誌が消失したので、王泥喜は慌てて顔を引き締めた。彼女はいつもの柔らかい笑顔でにっこり微笑んでいる。彼のだらしない顔は見られてないようだ。明日という言葉にイロイロ想像してしまうのは、しょうがないと諦めてほしい。

「俺あれ、煮物が食べたいな」

煮物?と首を傾げるので必死に名前を思い出そうとした。おかげで多少冷静を取り戻せそうだ。

「里芋とかコンニャクとか、色々入ったやつ」

「あ、筑前煮かな?渋いねー」

結局名前は出なかったのだが、伝わったので問題はない。

「買い物いく?」

名残惜しく名無しさんの膝にお別れし、彼女の横に座った。

「うん、でもその前に」

名無しさんがじっと見つめてくる。なんだろう、と思っていると彼女がじりじりと詰め寄ってきた。

(わ、わ)

王泥喜の目の前まで名無しさんの顔が近付いてくる。熱を帯びた眼差しにこちらの熱も上がった気がした。

「いや、その、まだ」

明るいし、などと口ごもっていると、急に視界が暗くなった。額に何かあたったので、頭突きでもされたのかと思った。恐る恐る目を開けると、視界はまだ暗いままだった。

(あ、あれ?)

手探りで視界を奪った何かを払い除けると、王泥喜は天井を仰いでいた。その視界の中に名無しさんがいる。目を瞑っている彼女はどうやら眠っているようだ。

(ま、まさか)

彼女が起きないよう、ゆっくり身体を起こして彼女の横に座った。足下に雑誌が落ちているので、どうやら眠ってしまった彼女の手から離れた雑誌が、王泥喜の顔に落ちてきたのだろう。

(夢か…)

がっくりと肩を落とす。だが落胆の中に安堵もあった。お泊まりということで色々とモウソウがボウソウして夢に現れてしまったらしい。

「起きてたの?」

目覚めた彼女がこちらを見ている。少し寝ぼけ眼の彼女も何か夢を見たのだろうか。

「うん、たった今ね。起こしちゃった?」

ううん、と首を振って両腕を天に突きあげ伸びをした。

「ご飯何がいい?外で食べてもいいね」

「俺名無しさんの筑前煮が食べたいな」

一瞬きょとんとし、そして微笑んだ。

「じゃ買い物行こっか、明日の朝も何か買わないとね」

「うん、行こう」

(夢の話はしないほうが良さそうだ)

王泥喜は今日一番の笑顔で答えながら、そう心に決めた。




2015,9,20

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