☆MAIN (別世界)

□不器用な俺、片翅の君 5
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年明けは、ゆっくり明希と二人で過ごした。

その間、びっくりしたのは、彼が、自分から、

何度も求めてきたりしたこと・・。笑。


それは、自分的にも嬉しかったのだが、

何より、彼自身が、義父に凌辱されてたことも

乗り越えられたのかな?と、

思うと尚更の喜びだった。


年末年始の休みが明けると、また、

いつもの生活が始まった。


もう、お正月気分も終わると言う頃・・・

いつものように、マオさんが、一人で、

来たのだが、休みだったようで、

珍しく早い時間、

いつになく、深刻な顔で・・・。


流石に、明希もその様子に、

何も言わなかった。

俺は、オーダーを取る前に、明希に、

半分シャッターを閉めさせた。


し「今夜は、平日で、暇そうだから、

三人で、飲もうか?マオさん、付き合ってよ!

幻の名酒が手に入ったしさ!」

と箱入りの焼酎をカウンターに置いた・・。


“100年の孤独”


マ「しんちゃん・・・これ!」

し「そ!ふふっ。良い時代に成ったよね・・・

なかなか入手困難だけどさ。ネットで、

見つけて、ちょっと高値だけど、

買っちゃったんだよね。笑」


箱から出して、丁寧に梱包された紙を

剥がして、蓋を開けた。

し「一応、名酒だからね。。

ロックにしようか?」

とロックグラスに、氷を入れて注いで、

三つ用意して差し出した。


し「孤独をも、味わってしまおうぜ!」

と乾杯をする。


マオさんが、静かに、口にする。


マ「美味しい。。。」と言って涙を零した。


明「俺、良く解んないけど・・・

飲みやすいね。」と微笑む。


黙って、ゴクリと飲み干した俺・・・。

芳醇だが、さらりとしてて飲みやすい。


すると、ようやくマオさんが、

重い口を開いた。

昨年末に祖父の喪が明けて、

弟さんが結婚することになった事。

その招待が届いたのだが、今の自分のことを

考えたら、帰省するか?どうするか?

考えあぐねてる事。

ゆうやとのことも今のままで、良いのか?

ノンケのゆうやにとって、非生産的な関係は

為に成らないんじゃないかって・・・。


(・・・・・・)


2杯目を注いで、口にした俺・・・

し「ねぇ、このお酒の名前ってさぁ、

ガブリエル・ガルシア=マルケスの

小説から、取ってるって知ってた?

何でか?解らないんだけどさ・・」


マ「それ、知らない・・」


し「一応さ・・・俺、その小説も

読んだんだよね。。笑 世界名文学らしいし。

でも、まったく、訳解んなくて・・・笑」


明「えっ!?どんなお話なの?」

重苦しい中で、明希が、聞いてきた。笑。


し「それが、可笑しいんだよ。或る一族が、

村を構築して没落していく100年間の

話なんだけど。一族の

名前がほとんど同じで、ややこしくて、

途中で挫折したよ!笑」


明「へぇ〜、そうなの?笑」


し「そう、近親相姦だの?のタブーも

出てくるんだけどね。笑

この焼酎の、ネーミングに、何故

取ったんだろう?って知りたくて、本買って

読んだんだけどね。笑。

なんで、あんな話の小説から、

取ったんだろうね?笑。

世界的名文学だから、取ったのかな?」


明「でも、この焼酎、どうして?名酒なの?」


し「年間、生産されてるのが少ないんだよ。

蒸留したものを寝かせたのを

ブレンドしてるんだけど。

年数は、3年、4年、5年物を

ブレンドしてて、なんせ、手間と時間

掛けてるんだよね。笑

メーカーさん拘っててね。で、

生産本数少ないの。

結局さ、飲みたいと思う人が美味いと

思って飲めればいいんだけど、

入手できないんだよね。なかなかさ!笑

でも、俺、よく解らんね・・・ただ、

美味いってしか。笑」って、マオさんに、

目をやると・・

マ「まろやかで、美味しいよ・・・凄く。笑」

二人の会話を黙って聞いてたマオさんが

そう言った。

し「それで、良いんじゃない?

酒造メーカーさんの

思い入れとかは、解らなくても、美味しい

と思って、飲めたら良い様にさ・・・。

マオさんが、どう思ってようが、

弟さんは、結婚式に来て欲しいと思ってて、

招待状送って来たんだろうし。笑

ゆうやは、間違いなく、マオさんに、

ベタ惚れなんだし。笑。

マオさんは、マオさんで、良いんじゃない?」


俺が、そういうと、マオさんは、

グラスを飲み干して、お代わりをした。


マ「良く解らなくても・・・

美味けりゃ良いかな?」と涙を拭って笑った。


し「やっぱ、俺、ビールのが好きだわ!

今日は、貸切にしたんだから、

マオさん、ゴチしてよ!笑」

と笑う。


マ「うわぁ〜出たね!

ボッタクリバー商法!良いよ!飲みなよ!」

と笑った。


それからは、いつもどおり・・・

俺は、100年の孤独より、生ビールを

煽り、マオさんは、プレミアムな焼酎の残りを

ゆうや土産に下げて、帰った。


帰り際・・・マオさんは、

「しんちゃん、ありがと!

可愛い弟の結婚式で、来月帰って来るよ。」

と手を振って帰ってった。。。
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