〓
□おひさま紙風船
26ページ/33ページ
「審神者会議???」
お昼過ぎのぽかぽかした太陽の下、あびの部屋に集合した刀達とあびは、鏡越しの上司に口を揃えて疑問を投げる。
その声に笑った(と思われる)相も変わらず紙を顔に付けた「上さん」は、
「そそ、年に何回かね、全国の審神者集めて近況報告するんだけど、」
「それにあびを参加させろと?」
「お、太郎ちゃん物分かりいーねぇ。早い話そう言う事」
「その呼び方は止めてください」
飄々としたテンションでそう言った。
「かいぎ?」
「そうだよ、雛。雛みたいな子達がいっぱい居るんだよ」
「うぇ……」
[会議]と言う単語に少し目を輝かせたあびだったが、何故か呻き声と共に顔をへの字に変えてしまう。
更にさり気なく、傍に控える太郎太刀に引っ付いたように見えるのは気のせいだろうか。
「え〜……雛もしかして嫌なの、会議?」
「いや」
太郎太刀の右袖を掴んで、ぷるぷる首を振るあびをじっと見つめていた光忠は、
「あびちゃん、結構人見知りだよね」
後ろから顔を覗き込んで微笑んだ。
「しとみしり?」
「人見知り、知らない人怖いよーってなること」
「あびしんないひとこぁい……」
太郎太刀の袖をきゅっとやったあびは、若干涙目になっている。
お使いに行かせたりなんだりとたまに外に出るが、ほとんど本丸に居るあびは、何気に自分と同じ種の人が苦手らしく、基本的に付き添った誰かが第三者との会話を済ませていた。
その間、ひたすらじっと固まってるのも最早恒例行事。
新参者の刀とかだと即馴染むのだが、やはりどこか、刀と人とでは違うのだろう。
「でもねぇ、雛のおねーさんが居なくなっちゃってからずっと、薩摩の審神者は欠席続きでね、そろそろ薩摩の情報も知りたいんだ」
「む〜……」
「当日は僕も向かうし、それに何も雛一人に行かせる訳じゃないよ?要は同じ場所に審神者が一気に集まる訳だから、護身用に一振り刀を連れて行く決まりがあるんだ」
これでどうだとびしっと言った上司に、困り顔のあびが少しだけ明るくなった。
「うえしゃんくる?」
「行くよ」
「だれでもいっしょつれてっていいの?」
「うん、誰でも良いよ」
「じゃあみんないっしょいく!」
元気よく右手を上げてそう宣言したあびに、上司が「え〜……」と頭を掻く。
「あー……それは難しいかな、と言うか一振りだよ一振り。分かる?一本だけ、一人だけ」
「あぅ……」
またしゅんとなってしまったあびに、「何落ち込ませてんだよ」的な各方面から鏡に向けて抗議の視線が向けられた。
「いやいやだって、全国の審神者に人数分の刀だよ?!それに刀全員とか、会議のしようもなくなっちゃうじゃん」
「つまりお前は俺達に無駄な争いをしろと、そう安易に言っているんだな」
「争いってなに大倶利伽羅くん!君達は何を起こすつもりなの?!」
「そうだね、幾ら常日頃同じ目的を持つ同志と言えど、こればかりは僕も譲れないかな」
「燭台切くんもどうしちゃったの?」
鏡の中で慌てる上司尻目に、何故か戦闘モードになる一同。
一人だけ涼しい顔をしたままの太郎太刀に向かって、あびがこそっと言葉を放つ。
「うえしゃんおろおろ?」
「ええ、彼は余計な闘いの火蓋を落としてしまったので」
「よくわかんない」
「あびは何もしなくて結構ですので、そのまま見守っていてください。さて、私も参陣しますか」
珍しく腕を捲った太郎太刀が立ち上がったことにより、置いてけぼりにされたあびは、事の現状を把握出来ずに首を傾げた。
「ここは正々堂々じゃんけんで良いよね!!」
[近侍]と指定されなかった故に、みんな連れて行く一振りになりたかったのだ。
後編、続。