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□おひさま紙風船
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太陽が、真上に登るお昼時。
庭で何かをしているあびと、その前でにこにこわらって正座をしている一期一振。
「いらっしゃーませ!」
「これはどうもご親切に」
ぺこりと頭を下げたあびに対して、一期一振も同様にお辞儀を返す。
数分程前、畑仕事を終えた一期一振はあびに「お店屋さんごっこ」をしようと誘われ、それに付き合っていた感じだった。
「なにほし……じゃない、なににしますか?」
「そうですな、それでは、こちらはなんですかな?」
手前にある泥の塊を指せば、
「そりは、おまんじゅうです」
「あびが作った!」とでも言いたげな嬉しそうな視線を感じるので、つられて笑みが深まる。
「他には何があるのでしょうか」
そう聞けば、枝に葉を数枚突き刺した物をびしっと指さしたあび。
「これ!これね、はっぱのおだんご!あ、です!あとこれね、どんぐり!」
子供って、どうしてか松ぼっくりとかどんぐり好きだよなぁ。
きっとあびの中では、泥団子よりも尚、どんぐりの方が目玉商品なのだろう。
「どんぐり!」の発音だけ、妙にテンション高いのはそのせいだ。
「では、そのどんぐりをいただきましょうか」
沢山拾ってきたのか、どんぐりの山からコロコロと一つどんぐりが転がる。
「おきゃくしゃんはながたかい!」
「それはそれは」
多分、「お目が高い」の間違いじゃないかと思うが、楽しそうに大人の真似をするあびが可愛いからスルーした。
「おいくらですか?」
どんぐりの値段を聞けば、
「ごえん!」
右手をぱーに広げたあびが、そう言う。
どんぐり一つで五円は安いのか高いのか。
まぁ子供の遊びだし、五円玉を出して渡せば、引き換えに渡される、
「えっ?!」
一期一振の右手に溢れるほど乗ったどんぐり。
更に両手でどんぐりを抱えたあびは、まだその上にどんぐりを追加しようとしていた。
「あび殿?もしや、これ全部ですか?」
「ふ?うん!!!!」
まさかのどんぐり全部で五円だった。
子供社会の価値に換算すれば、安いどころの騒ぎじゃない。
下手したら蝉の抜け殻と同じだけの価値はある筈だ。
「あ、ふくろあげる」
破格の値段だと言う事に全く気付かないあびは、そのままでは持ちにくいだろうと、恐らくどんぐり収集していた際に使っていたであろう袋を取り出す。
そしてその中にちょいちょいと一つずつ入れ始めた。
「如何して五円なのですか?」
素朴な疑問にそう問えば、
「なんだっけ?…………あ、そう!ごえんがありますよーに!!」
へらっと笑うあびに、なんかその例えようもない暖かい感情が湧く。
神社関連の刀達に聞いたのか、それとも元々知っていたのか、「ご縁がありますように」とはなかなか、
「良いですな」
「えへ、はい!」
全てのどんぐりを詰め終えたあびから、袋を渡された。
「それではあび殿、次は私の番です」
「なにが?」
首を傾げたあびに、またふっと笑う一期一振。
「そろそろお昼御飯の時刻ではないですか?」
「そだった!!」
お昼御飯と聞いて慌てて立つあびに合わせて、一期一振も立った。
「本日は、あび殿の好きなおかずを差し上げましょう」
「ほんと?」
「ええ、」
ですから、と、差し出した左手にあびの右手がきゅっと巻き付く。
下に弟が沢山居るだけあって、子供との付き合い方が上手い一期一振は、最近密かに「妹も良いですな」とかなんとか考えているのだと、風の噂で流れて来た。
一期一振の隣でご飯を食べる約束をしたあびの、ご機嫌度は果てしない。