夢(?)小説

□恋仲?いいえ姉弟です。
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この本丸の審神者の朝は遅い。いつも起きるのは巳の刻…午前中10時頃だ。それまでに目を開けようが返事をしようが本人には一切記憶は残っていない。それをいいことにちょっかいをかけようとする者には容赦なくその時の近侍から脳天殴打をくらう。する者は粗方決まってきているので容赦無く手刀…チョップが飛ぶ。そして今日も今日とて、「いい加減にしなよ!!!」「っあぃっったあああ!?」の応酬が本丸に響き渡るのだった。


「姉様、朝だよ。ずっと眠ってると身体が固まってしまうよ?」

そう言って主を起こすのは、本日の近侍のにっかり青江である。主の事を「姉様」と呼ぶのには一応理由があって、彼はとある事件をきっかけに審神者である彼女のことを姉と慕うようになったのだ。審神者本人も嫌な気持ちはしないどころか喜んで「青江」と優しい姉の瞳で語りかける。そして青江はそれに応える。それが始まって数日の間は、本丸にいる刀達は皆二人の甘ったるい雰囲気にあてられたのかそれぞれの相方やら誰やらに甘える現象が起きていた。正直兄弟、相方以外に向かなくてよかったとしか言いようがない状態だった。もしかしたら未だ独り身の誰かが砂糖を吐いたかもしれない。そのぐらいだ。
それにしても現時刻は朝の9時。まだ審神者が起きるのには少々早い。青江は、今日こそ姉様が早く起きれるようにと枕元で正座で粘っていたのだった。

「姉様、起きてよ。僕もう足が痺れてきたから、ねえ、姉様。」

────足を崩せばいい、というのは言わないお約束というものだ。
審神者の短い髪を撫で、ほら、早くと急かす。しかしやはりと言っていいのか、起きる気配は微塵もない。これは今日も駄目かと青江が少しばかり困ったような、寂しいような顔をしたその時だ。

「……ッひ……っ!!?」

寝返りをした審神者の腕が、痺れまくった青江の足に触った。その衝撃たるや不意打ちも相まってそれはそれは凄まじかったようで、暫く無言で畳に手を置き蹲って震えていた。お察しである。
審神者は幸せそうにすやすやと眠り、青江が足の痺れに悶える。そんな部屋の前を、この本丸の初期刀が通りかかった。

「…何をしているんだい?」
「……足、しびれた……」
「痺れただけでそうなるものか。」
「姉様が触った……」
「……ああ…」

浅紫色の長い髪を一纏めにした蜂須賀虎徹が、哀れむような瞳で青江を眺める。そんな目で見ないで、と思いつつ、ようやくマシになってきた足を気遣いながら身体を起こした。見やった審神者はやはりまだ起きておらず、柔らかく目を閉じていた。そろそろいつも通りの巳の刻になる。どうして起きれないのかな、とぼやく。するとまだ入口のあたりで立っていた蜂須賀が、生活の安定してる部分を壊すなって事じゃないかい?となんとはなしに返す。ああ、そういうのもあるのかと何となく納得して、それから「無理に起こそうとしてごめんね、姉様」と彼女の頭を撫でた。蜂須賀はもういない。

「今日のお八つは、2人が好きなものにしようか。」

ふふ、と、常よりも柔かい笑顔を零しながら、彼女が起きるまで頭を撫で続けた。




✱✱✱

(おはよう姉様。)
(んーおはよ…腹減った。)
(いつも通りだねぇ。すぐ作るから、その間に顔洗っておいで。)
(おう)


筆者の幼馴染み本丸のメンバー勝手に借りました。初めて一週間無いのでそんなに刀剣の数がいないので、悪戯しに来るのはもっぱら次郎太刀と陸奥守の2人です。多分和泉が来たらここに加わるでしょう。それと補足なのですが、「短い髪」は青江ももちろん、他の刀達が見てきた女性からすれば短い髪、という意味なので詳しい長さはご自由に脳内補正してくださいませ。

お粗末さまでした

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