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□蜂須賀が青江に告白する話
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好き、を表現するのにも、様々な形があるものだ。
愛の言葉を囁いたり、抱き締めてみたり、見つめ合って笑い合うのもまた初々しい「好き」だろう。欲を持つ好きの他にも友愛としての好き、親愛としての好き、愛玩としての好き…数えればキリがない。それほどに表現溢れる好きのなかで、自分が今抱いている「好き」を自覚しているもの、いないものにもまた分かれるだろう。自分の好きも他人の好きもわかる者もいるし、他人の好きはわかるのに自分の好きには気付かない者だっている。もちろん他人の好きにも気付かない者すらいるのだ。
この本丸の初期刀、蜂須賀虎徹だって「好き」を持っている。そしてそれを自覚していて、いつだってその気持ちを相手に伝えたくて猛アピールしている、のだが。───見事に、蜂須賀の「好き」は、周りには別の「好き」と受け取られてしまっていたのだった。




「どうして青江は俺を相手にしてくれないんだろう…。」

いつもはあんなに「つれないなぁ、」とか言ってるくせに。

少々むくれながら、お手製青江ぬいぐるみをぎゅ、と抱きしめながら呟いて、ひとしきり抱き締めたぬいぐるみを自分の目線の高さまで持ってきでじーっと見詰め、ほんの少し顔を赤くしてまた抱き締める。それを繰り返しながら、内番の手合わせを前にして、蜂須賀は自室でぐだぐだとしていた。はぁ、とため息をついて仰向けに寝転がり、浅紫の長い髪を畳に広げる。
彼が青江に執着しているのはなんてことはない、一目惚れだ。…ただし友愛的な意味で。
彼が誤解されているのはここである。傍から見ればただの恋する乙女のようだ。しかし彼自身は、自分が青江に抱いている感情は恋心ではないとわかっているし、金の鞘が綺麗だな、美人だな、傍にいたいなという純粋な気持ちをぶつけたいのだ。ただその表現を知らないが故に誤解される。
綺麗な金色が揃いだと言っては青江の苦い気持ちを無自覚に起こさせ複雑な気持ちにさせてムスッとされるし、青江は綺麗だ、と言っては「…皮肉なの?」とさらに追い打ちをかけることになるし、傍にいたいなと言うのは流れ的にはばかられて考え付いたのが歌仙のものと同じように簡略化された似姿の人形を傍に置くこととなってせっせと作る姿を見られてドン引きされるしで、傍から見れば本当にただのストーカーである。挙句の果てに「なんでそんなに僕に執着するの?」と訊かれた日には「一目惚れだよ!」と自信満々に答えてしまい完璧に誤解されることになった。ちなみに青江の卑屈さは経歴に関してであり、度合いは山姥切国広レベルと思えばわかりやすい。
そんな起こった事達を無かった事のように、蜂須賀は今日も「なんでだろ…」とぼやくのである。
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