短編(過去作)

□わがままプリンセス
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降旗が変だ。


最近バスケ部2年の間ではその話題で持ちきりだった。

1年のベンチ選手3人組の中でも特に人懐こく、バスケ大好き。
そんな降旗が、最近は自主練もそこそこにさっさと帰ってしまう。
自主練は強制ではないが、以前はルーキー2人に触発されたのか随分遅くまでやっていたから、どうにも気になってしまうのだ。

勿論そんなもやもやした空気を溜めるようなメンツではない。
部活を始める前の部室で、小金井が切り出した。

「そいえばさ、降旗、最近なんか始めた?」

「……え?俺、ですか?」

「うん」

その場の全員の視線が降旗に集まる。
どうやら思い当たる節があるらしく、なんとなく言いづらそうに顔を伏せた。

その時、ヴーとバイブが鳴る。
見れば、降旗のズボンのポケットの辺りが微かに振動していた。

「あ……すんません、ちょっと出ていいですか?」

全員視線を逸らさないまま、こくりと頷いた。
降旗は居心地悪そうにしながらも、携帯を耳に当てる。

「あー、もしもし?
……え?いや、全然そんな事ねぇけど。
うん、うん、わかった。
じゃあ、今から行くから」

話が終わったらしく、携帯を離すと降旗は勢い良く頭を下げた。

「すんません!ちょっと呼ばれてしまったんで、行ってきます!
なるべくすぐ戻りますんで」

それだけ言うと、猛ダッシュで部室から出て行った。

「……え?なに、今の?」

「うーん……コレか?」

伊月は左手の小指を立ててにやりとする。

「古ぃーよ!」

「いやでもそんな感じだよなぁ」

「また今度聞いてみよーぜ!」

小金井の言葉に頷いて、彼らは部活へと思考を切り替えた。





「――っごめん、待った?」

降旗が走り込んだ教室には、1人の少女が佇んでいた。

「……遅い」

「ごめん……」

ひたすら謝る降旗に、彼女は不機嫌さを隠さずに言う。

「……じゃあ、ちゅーして」

「えぇっ!?」

「特別にほっぺで許してあげる」

戸惑う降旗に彼女は更に言い募る。

「しなさいよ!してくれなきゃ別れ……っ」

咄嗟に彼女の口を自分の唇で塞いでから、降旗はにっこり笑ってみせた。

「君のわがままにもだいぶ慣れた、かも」

驚いていた顔をすぐに伏せて、彼女はぽそりと呟いた。

「降旗くんのくせに、生意気っ」

「えっ……ごめん!」



わがままプリンセス!


振り回したり、振り回されたり


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わがまま×降旗

この後ちゃんと折り合いつけて適度な距離感を身に着けると思います。

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