短編(過去作)
□もたれてひらく、
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「つっつつ土田くん!」
「ん、何?」
「いい一緒にマジバ行きませんか!!」
で、今マジバなわけだけど。
彼女は学校で待ち合わせた時から、ずっと落ち着かない様子でわたわたしている。
まぁ、そんなところがかわいいんけど。
「お次のお客様ー」
前にいた親子がどいて、俺たちの番になった。
「ご注文どうぞ」
ちらりと彼女を見ると、メニューを見ながらうんうん唸っていた。
「あ、じゃあ、俺はダブルバーガーセット」
「お飲み物はいかがなさいますか?」
「緑茶で」
「かしこまりました。……? 」
店員さんが彼女をじっと見る。
彼女は決めかねているみたいで、まだ顔を上げない。
そんな調子でしばらく経つと、なんとなく店員さんがイライラし出したのがわかった。
「うー、どうしよう?サラダセットかポテトか‥どっちもいいなぁ。どうしよう……」
彼女もその空気は感じるみたいで、どんどん焦りが強くなって更に混乱しだしていた。
「……お決まりですか? 」
ついに店員さんが促した。
彼女は肩をびくりと震わせて、恐る恐る、といった風でメニューを指差した。
「う、あ、えと、じゃあ……ハンバーガーの、んー……サラダセット……で……」
「お飲み物はいかがなさいますか」
心なしか店員さんの声が俺の時より低くて冷たい気が
する。
「えっと……爽健○茶……で」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
店員さんは足早に持ち場を離れる。
「あの、ごめんね……?」
不安そうに此方を見る彼女に、俺はにっこり笑ってあげた。
「大丈夫。俺もよく迷うし」
「え?でも、さっきは……」
「あぁ、マジバはよく来るから……毎回同じのを頼むって決めてるんだ」
部会を開いたり、普通に練習後にみんなで来たり。
しょっちゅう通っている内に、好きなメニューも決まってくる。
「そっか……!じゃあ、あたしもそうしてみようかなぁ」
数分ぶりの彼女の笑顔に、心が温まるのを感じた。
もたれてひらく、
(あの時はすぐ返事してくれた)
(それで充分だし)
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優柔不断×土田