小説
□恋告げる。
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「おい緋村、最近呉服屋のどら息子が小萩屋のまわりウロついてるらしーが知ってるか?」
早速、廊下で鉢合わせた飯塚が面白いネタを掴んだとばかりに声を掛けてきた。
来るだろうと踏んでいた俺は何も知らないフリをする。
出来るだけ飯塚にこれ以上気持ちを悟られないように。
それはもう淡々と冷静に。
「知りませんよ。」
「巴ちゃんに男かって野郎共が騒いでるんだよ!お前らどーなってんだ?」
「そんなことしか話題ないんですか?」
「そんなことでも気晴らししたいのさ。
わかってねーなお前は。
ボヤボヤしてると横から掻っ攫われちまうぞー巴ちゃん美人なんだから」
「そうしてくれた方が良いと思ってますよ。」
これは本当の気持ちだ。
俺じゃなくあの男の方が誰が見ても良いに決まってる。
家柄も良しだ。
そう告げると抜刀斎は飯塚から背を向けてさっさと歩いて行く。
「お?なんだよ…つまんねーな!もっと面白い反応くれよぉ!」
俺はあんたのお持遊じゃねーんだよ。
飯塚の叫びを背後で聞きながら自室へ向かう階段を上がった。