ハイキュー

□いつまでも
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「私たちって、一度も喧嘩したことないよね」

「…なに、急に」

2人で並んで歩いて帰っているとき、急に発せられた彼女の言葉に首を傾げる

「友達はみんな彼氏と喧嘩した話とかしてるんだけど、そういえば私はないなーと思って」

「別に喧嘩なんてしない方がいいデショ」

「そうだけど、そのとき疑問に思ったの」

「…?」

「蛍、私にちゃんと言いたいこと言えてる?」

無理したり、我慢してない?と続ける彼女

「…僕が我慢してるように見える?」

「わからないけど、私の我儘とかいつも聞いてくれるし…蛍は優しいからちょっと心配になって」

…これを部員たちが聞いたら何と言うだろう

僕自身だってそんな風に思われてると思っていなかったし、実際そんなに優しい人間ではない

「…別に、無理も我慢もしてない」

むしろ我儘言ってるのは僕の方だ

そう言っても、名前はうーんと首を捻って考え込んでいる

「…じゃあさ」

「ん?」

「何か我儘言ってみなよ。断ってあげるから」

「えー!何それ!でも待って考えてみる」

考えるのかよ、と突っ込みたくなったけどキャラじゃないしやめておいた

1人で考え込んでる名前を横目に見ながら歩いていく

…我儘ってそんなに思いつかないものなんだろうか

まだしばらくかかりそうだな、と思いぼんやりと空を見上げる

今日の部活

明日の宿題

週末の練習試合

様々なことに思いを巡らせていた

「明日、部活サボって一緒にいて?」

ぼーっとしていた僕は、その言葉を真面目に受け取ってしまう

「明日?何か特別なことでもあるの?」

「え、いやないけど…」

「じゃあ明後日でもいい?体育館使えないとかで休みらしいから一緒に居れるよ」

「……」

名前が黙ったことで、自分のミスに気付く

しまった、ついいつも通りに…

「…部活サボるとか、無理に決まってるデショ」

今更言っても遅いのは、僕だってわかってる

「ほらね、蛍は優しいんだよ」

先程の会話を忘れていたことに拗ねるような表情を見せながらも、名前はどこか嬉しそうだった

「…名前限定ってことで認めてあげる」

意味不明な上から目線な発言をしたあと、空いていた名前の右手をとった

手を繋ぐとか、普段はあまりしないけど…こうしていると自然と気持ちが伝わる気がした

「…いつか喧嘩することもあるのかもしれないけど、僕は名前に対して遠慮なんてしてないから」

名前もそうデショ?と小さな手を握る

「…うん!」

ぎゅっと握り返された手の温もりに、酷く安心している自分がいた



(もしぶつかることがあっても)
(2人で乗り越えよう)


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