ハイキュー

□始まりの一歩
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「…またやってる」

体育館の中を覗いて自然と目に入るのは、先輩マネージャーに飛びつこうとしている幼馴染の姿

「こら、清水先輩困ってるでしょ」

ぐい、と腕を引っ張り清水先輩から離す

すみません、と頭を下げると少し微笑んでくれた

クールな感じだけど、優しそうな人だと思う

「おお名前!何でここにいるんだ?」

「武田先生に用があったから」

これも嘘ではないけれど、バレーをする龍を見たかったからなんて、口が裂けても言えない

「じゃあついでに練習見ていけよ!」

本来はそれが目的だったわけで、龍の誘いを断る理由はなかった

「じゃあ…少しだけ」

「っしゃ、ガンガンスパイク決めてやるから見とけよ!」

「うん、楽しみにしてる」

私は龍のこと、幼馴染とか男友達とかじゃなくて…それ以上の存在として意識してるけど、さっき見た通り誰かさんはマネージャーの清水先輩に夢中だ

「なんでこんなに好きなのかなあ…」

ぼそ、と独り言を呟きながらコートの中を眺める



バレーをしている龍は、本当にかっこいいと思う

スパイクを決めたあとの笑顔

後輩を励ます姿

…たまにうるさすぎて怒られてるけど

全部ひっくるめて、龍らしいなあ…って思う

やっぱり大好きだって、実感するんだ



「潔子さーん!見てくれましたか!?」

休憩時間になると、一目散に清水先輩の元へ向かう龍

少しくらい、こっちも見て欲しい

…ねえ龍、私を見てよ

じっと龍のことを見ていると、やっとこちらに気付いて走ってきた

「名前、ちゃんと見てたか!」

「うん見てたよ。かっこ良かった」

「そうだろそうだろ!」

こういう言葉をかけても、龍は特に気に留める様子もない

「…龍、本当にかっこ良かったよ」

「何だ、やけに褒めるじゃねーか!さては俺に惚れたな!?」

なんて、冗談ぽく言うからちょっとだけイタズラしたくなった

ぐい、と龍のジャージを引っ張り、背伸びして耳元で囁く

「とっくに惚れてるよ。…いい加減気付けバカ」

しばらくフリーズしたあと、龍の顔がタコみたいに赤くなった

もう、その顔が見れただけだ十分

「なーんてね!じゃあ練習頑張って!」

「…え。え!?」

動揺したままの龍を置き去りにして帰る

言ってしまった、と後悔と恥ずかしさが押し寄せてくる

でもこれで、少しは意識してもらえたりするのかな

好きにはなってもらえなくても、女の子として見てもらえたりはするかも

それだけでも、私にとっては大きな進歩だ

…でも、明日からの私が素直になれるかどうかは、自分でもわからない




(おい名前!昨日のって!)
(…何のこと?)


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