銀魂

□恋の道には女が賢しい
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「…神楽ァ、お前は空気っつーもんを読めねェのか?」

「銀ちゃん何言ってるアルか。空気は目に見えないネ。んなもんどうやって読むアル?」

「………」



今日、久しぶりに恋人である名前が万事屋を訪ねてきた

新八は気を利かせたのか、単にこき使われているのかわからないが姉の買い物に付き合うと言って出て行った

問題はこいつだ

この酢こんぶ娘

さっきから名前にべったりで、離れようとしない

「神楽ちゃんと会うのだって久しぶりなんだから、いいじゃない」

穏やかな笑みを浮かべて銀時を宥めるように言う名前に、思わず頷きそうになるがやはり気に食わないものは気に食わない

「いいから定春の散歩にでも行ってこい。ほら見てみろ、主人に構ってもらえなくてすっかり拗ねて…」

そこまで行って定春に視線を移すと、プルプルと力んで明らかに何かを放出しようとしている姿が目に入り一気に青ざめる

「オィィィ!!そこでうん○するのだけはやめろ!俺たちを殺す気かァァ!?」

定春を引っ張って連れ出そうする銀時と、それを完全に無視する定春の様子を見て名前と神楽は面白そうに笑っていた

「銀ちゃん定春に遊ばれてるアル」

「でもここでされるのは私もちょっと困っちゃうな」

「心配無用ネ。定春はこの神楽様が毎日厳しくしつけてるアル」

「そう、それなら安心ね」

銀時はぎゃあぎゃあと騒ぎながらも、呑気に笑って話している2人を横目に見ながら複雑な心持ちだった

(名前が楽しそうなのはいいけどよ〜…そろそろ俺のこと構ってくれても…)

ぶつぶつと心の中で呟きながら、こっそりと溜息をつく



定春が銀時を構うのに飽きたのか、丸まって寝息を立て始めたことで銀時はいよいよ暇を持て余してきた

相変わらず名前の横は神楽が独占

再び小さな溜息を着くとソファにごろんと寝転びジャンプを読み始める

もう既に内容は知っている。ただ眺めているだけだった

そのうち徐々に瞼が重くなり、いつの間にか銀時は意識を手放していた



どれくらい時間が経ったかはわからない

銀時が目を覚ましたとき、周囲には先程までの騒がしさはなく、しんと静まり返っていた

(定春の散歩にでも行ったか?)

ぼんやりとそんなことを考えながら、まだ寝足りない銀時は目を閉じたまま、もう一度眠りにつこうとした

そのとき、近くに人の気配を感じる

ふわりと香るのは、どこか懐かしいような甘い名前の香り

名前がそばにいる

目を閉じながらもそれを感じとった銀時だったが、すぐに目は開けなかった

(…散々ほったらかしにしやがったんだ。今度は俺の番だろ)

我ながら子供っぽいとは思いつつ寝たふりを続けた

「…好きよ、銀さん」

頬に触れる、あたたかい感触

それが触れた場所に熱が集まっていく

(…あァ、これじゃ俺が起きてるのもバレバレだな)

そう思いながらも目を開けることは出来ず、頬に熱を持ったまま狸寝入りを続けた

(…俺の方が好きだっての)

先程までの不機嫌さは、あっという間に消え去っていた






(今日わかったこと)
(…俺って、案外ちょろい)


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