戦姫(番外編・短編)

□巡り逢う(紫苑様リク)
1ページ/2ページ




白(ハク)「ちょっと、信!待てよー!」

信「遅えぞ、白!早く来いよ!」



白(ハク)と信、漂は同じ下僕として
里典一家に使われていたが、3人一緒の生活は
長く続かなかった。漂がある日唐突に
咸陽へ連れて行かれ、2人になった。
白(ハク)は炊事を担当し、信は力仕事をした。
これには里典一家も安堵したらしい。
白(ハク)が作る料理は絶品だからだ。



〜ある日〜
仕事が全て終わり、下がろうとした
白(ハク)と信だったが、


里典「白(ハク)。ちょっと話がある。来なさい。」

白(ハク)「? はい。」

里典「信は下がってろ。」

信「えっ?」

里典子「ほら!」


信を小屋に押し込めた里典の子は
そのまま話が終わるまで居座り、信を
逃さなかった。



里典妻「白(ハク)。あんたが拾われた子どもだってのは前に話したね?」

白(ハク)「はい。」

里典「その、だな。お前ももう8つに
なったし、きちんとお前の出自について
話をしておこうと思う。」

白(ハク)「え?」

里典「お前は、貴士族の娘だ。」

白(ハク)「?!」

里典妻「これまで隠していたのには、
訳があるんだ。お前さんの母親が、亡くなる
直前にお前が8歳になるまで話さないようにと言い残していたからなのさ。」

白(ハク)「母、は、どこの人だったんですか?」

里典「詳しい事は分からん。
その前に死んでしまったからな。だが、
名前と父親の姓、事情は分かった。」

白(ハク)「・・・。」



これまで知りたいと願わぬ日はなかった事。
しかし、いざとなると手の震えが止まらない。



里典「母親の名前は白璻。
父親の姓は、‘王’だ。白璻は王家の屋敷に
仕えていたそうだ。そしてそこの若殿に
見初められてお前を授かった、と。
だが、その若殿に縁談をもちかけていた良家が白璻とお前を消そうとした。そこで白璻は、
若殿の留守をついてお前を連れ、屋敷から
逃げ出した。追い出すだけでは飽き足らず、
良家は刺客を送った。白璻は逃げに逃げ、
とうとうこの村の入り口に来て力尽きて
死んだ。ワシらはお前を託され、
ワシの下僕として養う事にしたのだ。」

白(ハク)「・・・。」

里典「これまで、すまなかった!」

白(ハク)「・・・やめてください。
本来ならば見捨てても良い、大した役にも
立たない娘を今まで隠し、守ってくださり、
ありがとうございました。」

里典妻「でも、私らは、」

白(ハク)「感謝こそすれ、恨みなどしていません。
本当に、ありがとうございました!」

里典「白(ハク)。これから、どうする?」

白(ハク)「なるがままに。かつて母を
寵愛していようと、もはや父は私を捜しては
いないでしょう。天の導くままに生きます。
これまで通り、私をここで働かせて
いただけないでしょうか?」

里典「本当に良いのか?」

白(ハク)「はい。」

里典「・・・分かった。」



しかし、変化は予想外に早く起きた。
次の日の夜、血塗れになった漂が
戻って来たのだ。里典は白(ハク)に信と共に行くよう
命じ、里典の妻は白(ハク)に白璻の遺品をもたせた。
シンプルだが精巧な細工の腕輪と
一振りの剣。

その後、会った大王と行動を共にし、
昌文君らと合流。昌文君は白(ハク)を見て驚いた顔をしたが、白(ハク)は気に留めずバジオウらと会話していた。


〜夜〜
昌文君「白(ハク)、といったか?」

白(ハク)「これは、昌文君。何か用か?」

昌文君「お主、両親は?」

白(ハク)「父親は分からない。母親は、生まれて間もない私を連れて父親の屋敷を出、力尽きて倒れた村で亡くなったとか。」

昌文君「名は、分からんのか?」

白(ハク)「父親は、名は分からないが姓だけは。確か・・・王、と。」

昌文君「!母親は?」

白(ハク)「白璻。この腕輪と剣は、母の遺品。これしか私には無い。」

昌文君「お主の父親を知っている。
母親もだ。お主、父親に会いたくはないか?」

白(ハク)「いいや。今さら会ったところで父親は私なんて覚えちゃいない。それに、いきなり娘だと名乗ったところで信じてはもらえないだろうし。」

昌文君「そのような事はない。
そいつは今まで1人も妻を娶らず、
独り身を貫いている。会えば分かる。
お主は母親によく似ているからな。」

白(ハク)「だと、良いのですがね。」



〜咸陽〜
王騎は成キョウ側と嬴政側の戦いを見ていた。
そしてその中で戦う少女にかつて愛した女の面影を見た。まさに生き写し。



王騎「白璻・・・?」



いや、そんなはずはない。彼女は、
昔生まれたばかりの娘を連れて姿を消した。
摎を喪い、消沈する自分を立ち直らせ、
前を向かせてくれた彼女。
捜しても手掛かり1つなく、諦めた。
その彼女の面影を持つ少女。
あの時の赤子が生きていれば同い年であろうと思う。白璻が姿を消した原因が縁談相手の家であったと知った彼は、縁談を破談にした。
それだけ白璻を愛していたからだ。



王騎「見間違い、でしょうね。・・・白璻。」



しかし、その少女が扱っている武器に
見覚えがある。身につけている腕輪も、
かつて自分が彼女に贈ったものにそっくりだ。
さらにはあの馬術、剣術。

かつて愛した女性の面影を持つ少女を
記憶の片隅に置いて、王騎は政が昭王の後継者たるに相応しいか見極めるために戦場へと下りて行った。




戦場が静まり返り、大王たる少年は
大将軍に自分に仕えるよう言った。
その言葉に、怪鳥と謳われし大将軍は
もっと実力をつけろと返した。

去り際、大将軍は少女を間近でまじまじと見、
疑念を確信に変えた。咸陽宮から出た
彼は、少女の身辺について調べ始めた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ