お話し

□元カレな話
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「ユグ、俺の前に付き合ってたのって誰?」

俺達が出会って間もなくして、ユグは恋人が出来たと言っていた。その時はまだユグへの想いが恋だと言う自覚がなく、その報告に訳も分からず心を痛めた記憶がある。
いつもなら終わった話をいちいち蒸し返したりはしないのだけれど、あることが頭を過ぎったら気になって仕方なくなった。

「今それ言う?」

驚き目を丸くするユグの手には先程まで舐めていてテラテラと光沢を放った俺自身が握られている。
しかし今気付いたのだ。ずっと感じていた違和感の正体。それはきっと・・・

「男だろ。」

さっとユグの顔から表情が消え、もうこそからは何も窺い知る事は出来なくなった。
馴れた今だから分かるユグとのSEXで失敗したことがない不自然さ。男同士でのソレの知識や準備があった訳ではないのだから、舞い上がる俺をよそにユグが自分で解していたとかそれとなくリードされていたとしか思えない。最初から後ろで感じていたし、大体フェラチ●が上手すぎる。
身体だけの遊びが出来る器用さを持っていないとなれば、女だとばかり思っていた元恋人というのが男で、男ならば俺が知っている奴の可能性が高い。

「ベッドの上で他の人の話なんかしないで。」

止まっていたユグの手がゆっくりと動き出す。続いて自身に伸ばされる舌を骨抜きにされる前に額を押して止めた。

「誰?」

黙りを決め込むユグを力強く見つめ続けると渋々と言った顔で口を開いた。

「ジコなんか不特定多数じゃん。」

じとっと睨まれなんだかバツが悪い。
言い訳だがその時はそうしていないと苦しかったのだ。たくさん恋をしたかった。たった一人の愛する人を見ないために。しかしどんな理由があろうとユグとこうなる直前まで股も掛けてたし手当たり次第だったのは事実で、ユグはそういうのを理解できたりはしない。

「特定の人がいなかったと言え。」

「・・・物は言いようだね。」

初めて見せる嫉妬めいた視線に一瞬ヒヤリとしたが、ふっと笑い唇を寄せてくるのでほっと胸を撫で下ろし遠慮なく吸い付いた。より深く繋がろうと舌を絡めると冷めかけていた自身が熱を持ち始める。同時に話が逸れているのにハッと気付き肉の薄い尻を鷲掴みにした。

「痛ったーーーッ!!」

「はぐらかすんじゃねー!」

隠されると不安でイライラしてくるのだが知ってか知らずか呑気に尻を摩りながら拗ねたように頬を膨らませた。

「もう終わった事だよ。」

そうだけど。
確かに聞いたところで何も変わらないし大半ががどうしようもない事への嫉妬からきているのだけどこれからのための事もある。たとえば・・・

「友達だっつって俺の目盗んで何やってるかわかんねぇのは嫌だ。」

「ジコの目盗んで俺が何か変な事すると思うの?」

そう問われれば答えはNoだ。触れられるのすらそれとなくかわすのも知っている。だから好きなのだ。けど・・・ここで諦めるわけにはいかない。

「向こうがどうだかわかんねぇだろ。」

関係が深く周りに付き纏う奴ならば警戒はしておきたい。俺のモノだと見せつけて牽制し、未練なんて残してたらソッコー叩きに行く。

「ジコの事好きなのバレたのが別れる原因になったのに?」

そうなの?!
さらりと聞かされる重大な事実にじわじわと胸が熱くなる。そっちの話が気になって前の男など一瞬でどうでも良くなってしまったのはユグが与えてくれた安心か罠か。そんな俺を見透かしてか目を細める顔になんだか意地になる。

「・・・俺が初めてだと思った。」

「ジコで最後だよ。」

「・・・・・・。」

「これからはずっと一緒でしょ?」

照れもせず、真っ直ぐに見つめてくる瞳に完全に負けた。もう不安も不満もなくなってしまった。
今ここにこうしている事が嬉しくて確かめるように強く抱き寄せると、ふわりと包んでくる腕がこの先すら間違いないのだと知らしめてくれる。

「上手く誤魔化せたとか思ってんじゃねーだろうな?」

照れ隠しにしつこく意地悪を言うとユグもまた、世界を虜にした天使の笑顔でペロリと舌を出した。





END
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