中編/短編
□好き
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私が実の兄に恋をしたのはいつからだろう。
気づいた時にはすでに好きになっていたし、もしかすると生まれた時からかもしれない。
小さい頃から兄に周りとは違う特別な感情を抱いていた。しかし、幼い私にはそれがなんなのかわからず、とりあえず「好き」という言葉でしか表現できなかった。
兄に向かって『好き』という度に、兄は「俺も好きだよ」と笑って返してくれる。それが何より嬉しくて.....何より辛かった。
兄が私を好いてくれるのは私が妹だから。所謂[家族愛]というものだろう。でも、私が兄に抱いているのは[家族愛]なんかじゃない。兄のことを異性として好きなのだ。
妹なんかじゃなくて一人の女性として見て欲しいとは思うけれど、そんなことは口が裂けても言えない。
今の関係が崩れてしまったら、兄はもう私に「好き」なんて言ってくれなくなる。だから私はいつまでも[妹]でいるべきなんだ。
『兄さん、好きだよ。』
「ああ、俺も好きだよ。」
毎日兄さんに『好き』という。兄さんも笑って、私の頭を撫でながら「俺も好きだよ」といってくれる。
ああ、私達が兄妹じゃなかったらよかったのに。そうしたら私はこの状況を素直に喜べたのに。
私がこんなふうに思っていることなんて兄さんは知らないんだろうな、なんて思いながら私は今日も兄さんに『好き』と言うのだ。
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END.