短編
□山崎の場合
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ベンチに座り、弘くんに隣に座るよう促す。何故か私の膝の上に乗った。ブルータスお前もか。
理由を聞いてみると「なんとなく座りたくなった」らしい。理由になってない。文句を言おうとしたら、眉を下げて「ダメ?」と聞かれた。私に文句を言うという選択肢は無くなった。目つき悪くても小さい子は可愛い!可愛いは正義!
さて、何を喋ろうか…。あっ、今なら誰もいないし落ち着いてどうしてこうなったのか聞けるんじゃ?
『弘くん。』
「なに?」
『弘くんはどうしてここにいたの?』
本当はなんで小さくなったのか聞きたいけど流石にそこまでは分からないだろうから、やめておいた。
「…わかんない。気づいたらここにいた。」
やっぱりわからない、か…。原因不明とか困る。私の勘がまだ他の連中も巻き込まれるかもしれないといっている。乙女の勘は当たるのよ!
『そっかぁ…。うーん、じゃあ弘くんは何か聞きたいことある?』
「僕のパパとママどこにいるの?」
『えっ。』
なにその質問めっちゃ困るんだけど!?なんて返事すればいいの?ガチで分からない。
『ご、ごめん。ちょっと分からないかな…。』
「……。」
『…弘くん?』
弘くんから返事が無かったから、そっと弘くんの顔を覗き込んだ。弘くんは涙目になっていた。あわわわ、どうすりゃいいのさ!
その時、ガチャと部室の扉が開いた。きゅ、救世主か!?
「あれー?名無し何やってんの…って、名無しがガキ泣かしてるー!」
救世主じゃなかった。ただのクソガム野郎だった。
「いーけないんだーいけないんだー!せーんせーに言ってやろー!!」
『うるせぇ!ガキかよお前は!!』
原ちゃんがニヤニヤ笑いながら私を指差してくる。マジでイラつくわ。
「名無しちゃんったらひっどぉーい。一哉くん傷ついちゃったぁ。」
『うぜぇ、マジで黙れよ。』
「ひっどいなー。てか、名無しのせいでその子怖がってるよん?」
『うっそ。』
私の豹変ぶりに驚いたのか、弘くんが少し震えてる。原ちゃんに気を取られてたせいで弘くんにまで気が回らなかった。原ちゃんのせいだ!