短編
□古橋の場合
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花宮から康次郎を受け取った時、部室の扉が開いてザキが入ってきた。
「…赤ん坊?」
やっぱり第一声はそれか。みんな赤ちゃんが気になるのね。
「花宮と名無しの子だよー。」
『原ちゃん懲りないね。』
とりあえずもう一回蹴っておいた。
『ほらほら、康次郎だよ。』
ザキに康次郎の顔を見せた瞬間、理解してくれた。私の中で1番好感度が高いのはザキかもしれない。かも、だけどね!
「そういえばさー、名無しって俺らのこと名字で呼ぶじゃん?」
『もしかして原ちゃん苗字で呼ばれるの嫌だったの?ごめん、これからはクソガム野郎って呼ぶね。』
「なんでそうなんの!?」
え?違うの?
「俺らがガキになってた時は名前で呼んでくれてたのにー、今は苗字呼びじゃん?なんでー?」
ん?逆じゃない?基本が苗字呼びだから名前呼びの方が珍しいってことじゃ?ん?よくわかんない。
『…何が言いたいの?』
「名前で呼ぼうぜ!」
『やだ。』
なんだそんなことか。ザキが「即答かよ!」ってツッコんでるけど無視で。
「なんでダメなのー?」
『可愛くないから。』
ぷくーっとガムを膨らましてる原ちゃん改めクソガム野郎に適当に返事をする。
別に名前呼びが嫌ってわけじゃないんけど、花宮以外は呼ぶ文字数増えるんだよねー。めんどくさい。
「可愛くないってどんな理由だよ…。」
『だって可愛くないのは本当じゃん。…え?もしかして可愛いって思われたいの?マジで?』
こんなデカいDKが可愛く見られたいとかないわぁー。
「ちげーよ、俺らはお前のこと名前で呼んでるのにお前は苗字呼びっておかしいって言いたいんだろ。」
あ、花宮話聞いてたのか。
『じゃあ皆が私を苗字呼びすればいいんじゃないの?』
そういえばなんでコイツら名前呼びしてるんだろ。馴れ馴れしい。まぁ嫌じゃないけど。