短編
□古橋の場合
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「それはなんか違うっしょ。」
まだ文句を言うのか。めんどくさい奴らだ…。
『別にいいじゃん苗字呼びでも。ねー、康次郎?』
康次郎に笑いかける。すると、康次郎も小さく笑った。わらっ、た…?
『康次郎が笑った!めっちゃ可愛い!』
うわあ、キュンキュンする!可愛すぎ!
「マジで?…なんだ真顔じゃん。」
原ちゃんとザキが覗きにきたけど、その時にはすでに真顔に戻ってた。
「名無しの見間違いなんじゃねぇの?」
『んなわけないでしょ。私の可愛い康次郎はちゃんと笑ってたから!』
「いや、古橋はお前のじゃねーから。」
確かに古橋は私のじゃない。…だが康次郎は私のだ!
「俺にも見せろよ。」
花宮が近くに寄ってきた。やっぱり花宮も康次郎の可愛さに気づいたのかな?
「ほら、笑ってみろ古橋。……康次郎。」
花宮が康次郎の名前を呼んだら、康次郎が笑顔になった。私が呼んだ時とは大違いだ。そんなに花宮が好きか。
それにしても…。
『マジで康次郎可愛すぎ。ごめん我慢できない。』
辛抱たまらん。
思わず康次郎の頬にキスをしてしまった。その瞬間、康次郎の体からボフンと煙が上がった。……マジか。
『重ッ!!』
「!?」
康次郎を抱っこしてた私は、古橋の重みが全部加わることになる。もちろん私が耐え切れるはずもなく、地面に落とした。
古橋が睨んでくるけど仕方ないと思うんだ。
「…酷い目にあった。」
『ごめんって。今度なんか奢るから許して。』
「落としたことに関しては別にいい。問題はその前だ。」
その前…?
『あー、もしかしてキスしたこと?確かに悪いとは思うけどさ…康次郎が可愛すぎたのがいけないと思うんだよね。』
そう言うと古橋は冷や汗を流していた。え?そんなに嫌だったの?
でもホントに康次郎が悪いんだって。反省も後悔もしていません。
「いや、そういうことじゃ……何でもない。気にするな。」
『?分からないけど分かった。』
とりあえず奢らなくていいってこと?まぁいいや。
後ろ振り向いたら般若みたいな顔した花宮がいたけどとりあえず無視しておいた。
ちなみに瀬戸はずっと寝てた。