短編
□古橋の場合
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「…あれ?その子どったの?名無しの子供?」
『ブチ殺すぞ?』
部室に入ってきた原ちゃんの第一声に殺意を抱いた。私にそんな相手がいないと分かっていて言ってるのか。あれ?なんか論点が違う?
「冗談じゃーん。で?今度は誰なわけ?」
『顔見たら分かるよ。』
「…古橋だね。」
やっぱり一目見ただけでわかるらしい。さすが古橋!自他共に認める死んだ魚の目をした男!
「なんで古橋だけ赤ん坊なの?」
『私に聞かないでよ。まぁ、可愛いからいいじゃん?』
「可愛い…?」
原ちゃんが首を傾げてる。可愛いじゃん。いつもなら表情筋動かないし死んだ魚の目をしてるしで怖いけど、赤ちゃんになるとなんだか愛嬌があって可愛い。赤ちゃんってすごい。
ただ高い高いとかしても真顔なのは少し悲しいけど。
原ちゃんが古橋のほっぺたをつんつんしてたら部室の扉が開いた。
『花宮。今日は早いね。』
「ああ……赤ん坊?」
「そーそー、聞いてよ花宮!この子名無しの子供だって!」
原ちゃんがケラケラ笑いながら花宮に伝えてる。何してんだ…鼻で笑って馬鹿にされるのがオチだろうに。そう思って特に何も言わないでおいた。
「…誰とのだ?」
『え?』
「相手は誰だっつってんだよ!」
えええええ!?なんか花宮怒ってるんだけど!?こ、こわっ!ちょ、近寄らないでください!!
「ほら、言えよ。誰とのガキだ?俺の知ってる奴か?」
めっちゃ詰め寄ってくる!マジで怖い!原ちゃん助けて!!
「あー……めんご☆」
原ちゃんブチ殺す。
とりあえず今は花宮だ。なんで怒ったのかは知らないけど怖いから落ち着いてもらおう。てか、こんな状況ですら眉一つ動かさない康次郎強すぎ。私泣きそうなんだけど。
『は、花宮落ち着いて…。』
「あ゙あ゙?」
こわっ!ヤのつく自由業の方も裸足で逃げ出すレベルの怖さなんですけど!!
『この子古橋だから!!』
バッと康次郎を見せると、花宮はぽかんとした。お、落ち着いた…?
「…マジで言ってるのか?」
『マジだよ。この死んだ魚のような目とかどう見ても古橋じゃん?』
「………。」
『古橋との子供じゃないからね!原ちゃんとかザキとか瀬戸とかみたいにちっちゃくなってるの!!』
なんか怖かったからとりあえず先に否定しておいた。