短編

□山崎の場合
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『ま、まぁ、とにかく怖がらなくていいからね!』


「うん。」


大人しくコクンと頷いた弘くんの頭を優しく撫でる。


「はー、コイツマジでザキなんだ…。」


原ちゃんが近づいてきて弘くんを見下ろす。
弘くんは原ちゃんが怖いのか、私の服をぎゅっと掴んできた。ちょ、制服シワになるからやめて!


「信じらんねぇ…。おっ、結構伸びるじゃん!」


原ちゃんは弘くんのほっぺたを引っ張って遊んでいる。弘くんは眉を顰めたりしてすごく嫌そう。まぁ原ちゃんはそんなの気にせずに遊んでるけど。


『ちょっと原ちゃん、弘くんが可哀想だからやめてよ。』


「えー?楽しいのにー。」


原ちゃんはガムを膨らませつつ文句を言う。いつも思うけどガム膨らませながら喋るって器用だよね。まぁ、よくガム割れて口の周りベチャベチャになってるけど。


「…オイ、またガキ連れてきたのか?」


『あ、花宮だ。』


いつの間にか花宮が部室に入ってきてた。


『ほらほら弘くん、見てアレ。面白い眉毛でしょー。』


花宮を指差してそう言うと、弘くんはプッと小さく噴き出していた。さっきから怖がってばっかだったから、少しは笑わせたかったんだよね!よくやった花宮!


『…って、痛い痛い痛い痛い!!!』


花宮が私の頭を握り潰そうとしてくる。こうなることは分かってたけどやらずにはいられなかったんだ!てか、この前より痛い気がする!!


『花宮離して!痛い痛い!!馬鹿になるって前から言ってんじゃん!』


「だからテメーは元から馬鹿だろ。」


「ヒッ…。」


『ほら!弘くんが怖がってるでしょ!離せバカ宮!!…痛い痛い痛い!!!』


バカ宮と言ったら余計に力を込められた。弘くんが怖がってるって言ったのに!なんで離してくれないんだよ!花宮のバーカ!!


「アイツ前回ので懲りてなかったのか。」


「前回って?」


「お前が小さくなってた時だ。今と同じように花宮を馬鹿にして頭を締め上げられていた。」


「何それ、名無しちゃん学習能力なさすぎっしょ!」


原ちゃんが私を見て笑ってる。前回は原ちゃんのせいで私が虐められてたんだぞ!まぁ今は完全自分のせいだけどね!!ってかマジで痛い!
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