戦地勤務

□第五話 糖分過剰摂取には気をつけろ
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「なぁ、あんたら」


「あん?」

「金さえ出せば何でもやってくれる万事屋ってのやってんだろ?この不景気の中儲かんのか?」

「余計なお世話だハゲ」
「依頼しねーんならとっとと失せなハゲ」

「ハゲハゲ言うんじゃねー!なんだ人がせっかく心配してやってんのにその態度は!!」

「心配と言う名のただの好奇心だろ。心配すんなら客連れてこいや。」
「そーだ!そーだ!」

「その客を連れて来てやったんだよ!感謝しな小僧っ子共!」
「マジでか。」
「この銀髪が失礼な態度をとってどうもすみません〜」
「テメーもだろーが!!何一人だけ逃れようとしてんの!?」

「てへぺろ。」

「可愛くねーし。」




第五話 糖分過剰摂取には気をつけろ



使われなくなった廃屋を有難く使わせてもらって早数年。

あれから、銀時が元々生業としていた金さえ出せば何でもやるという万事屋なるものを、社長の銀時と俺という従業員1名で新たに開業。
支給される物資ではやはり生活が困難を極める故にだ。

まぁ、依頼に来る者なんてごく稀にしか来てはくれないのだけれど。



「またアンタか。」

「客じゃねぇじゃねーかよ。あんの腐れハゲ、次会ったら残り少ない希望むしり取ってやる。」

「ははっ、見逃してやってくれないか?どうやら彼は勘違いをしてしまっていてね」


そして、今日も依頼人は来ず。

代わりに来たのは、領土奪還作戦で助けたこの兵士。エルヴィン・スミスという男。
この男が厄介で、あの勧誘を受けた次の日からほぼ毎日といっていい程こちらに通ってくる。


「毎日懲りずによくやるなお前も。」

「君達がいい返事をくれればもう来ることはないだろう。ただ毎日私の顔を見ることになるが。」
「一緒じゃねェか!!」


このやり取りをもう何十回何百回としただろう。俺たちもいい加減飽きてきた頃だ。

とりあえず、エルヴィンに座るよう促し、机の上へと茶を出す。

「いいのかい?」
「別にこれはお前の為とかじゃないですぅ〜勘違いしないで下さい〜」
「なんだお前いつからツンデレキャラになった」

「つん…?」

「あ、いやこっちの話。」


エルヴィンは微笑み、ありがとうと言ったあと静かにカップに口をつけた。
これも習慣化されつつある。


「…お前、なんでそんなに俺らに固執するわけ?」

ふと長い間思い続けた疑問を銀時は投げかける。
それに便乗し、俺も口を開いた。

「そうだよな。…この間なんか、依頼人から話を聞いてたらフツーに後ろで真剣な顔つきでメモ取ってたし、人探しや迷子の依頼の時なんか一緒にあちこち町駆け回ってたよね。飯時は必ず居るし、今みたいに椅子に座って他愛もない話したりしてるし。…もう恐怖を通り越して仲間意識高まっちゃってるんだけど。なんなの?従業員?従業員なの?」

「まぁ、お陰でこっちは助かってるけどな。」

と、隣に腰を落ち着かせている銀時の思考は手に取るように分かる。
確かにエルヴィンの頭は素晴らしいもので、依頼中は何度も助けられた。
だが、コイツが本気で嫌な顔をしないのは、彼が持ってくる甘い菓子折りによってだ。コイツの言う助かるの大半はこれ。今も目線は机に置いたあんまーいお菓子。


「最初は純粋な興味からだよ。何でも屋というのは、内容毎に新鮮味を感じさせる。だが手伝っていくにつれ、依頼よりも君達の魅力にとりつかれてしまってね。」

「おいおい…」

「…それに私はその君達に助けられたんだ。あれが無ければ今頃、私はこうして歩く事も話す事も出来ない。恩を返したいと思うのは当然だろう」

「いや、勧誘してくる時点で恩を仇で返そうとしているよねキミ」


はははと、何とも軽く笑う彼に、口の横に食べカスを付けた隣の天パに呆れて息を吐く。

「だが、初めて立体機動装置を使いあれ程まで巨人を削ぐ事が出来るとは…。やはり勧誘を止める事は出来そうもない」
「いやいや、止めろよ。」
「俺達がいなくても、最近よく耳にする人類最低?いや霊長類最高?がいるんだろ?完全に俺達用無しじゃねーか。霞むじゃねーか。」
「人類最強な。」

「…実はそーでもないんだ。確かに彼は、今までの兵士よりも断然強くより多くの巨人を倒す事が出来る。だが、かと言って、全ての人間が助かるという訳ではなく、人類最強を持ってしてでも調査兵団では多くの人が死に絶えてしまう。…あの時見た、一般人にして巨人を倒す君達二人を見て心の底から欲しいと思ったんだ。より多くの屈強な兵士が調査兵団に入ってくれれば、この悪夢は無くなるかもしれないからね。」

真剣な目付きで問われ、改めて調査兵団へ勧誘される。
眉間に皺を寄せながらもお菓子から目を離さない銀時は本当に興味がなさそうだ。

「空気読め天パ。」
「あん?」
「口元に食べカス付けてみっともない。」

と言いつつ口元を拭う俺はコイツの母ちゃんか。
先程とはうって変わってエルヴィンが微笑ましそうにこっちを見てるぞおい。

「では、私はそろそろお暇しよう。」
「あ?帰んの?」
「今日はやけに早いな。何かあんの?」
「ああ。残してきた仕事がまだあるんだ。また夜に来るよ。」
「別に来なくていーよ。」
「晩飯くらいいいだろう?」
「いつものスープにパンだぞ。」

構わない、そう笑顔で言い残し彼は帰って行く。
閉じられた扉を見て息を吐いた。

「そーため息ばっかついてると、幸せが逃げるぞ。」
「そーかもな。けど…そーしようと思うんだ。」

「あ?」

訳が分からないような顔をした銀時に、真剣な目を向けこれからについて俺は話始めた。


第五話 糖分過剰摂取には気をつけろ


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