戦地勤務
□第四話 初対面では笑顔を忘れずに
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「腹へったー…ぎーんときー銀時銀時銀時銀時!!腹へったよォォォ!!」
「うるせーよ。お前さっきパン食ったばっかだろ。」
「一個をお前と半分こしたやつをな。」
「…あー、腹へったー。」
「テメーも腹減ってんじゃねーかァァァ!!」
第四話初対面では笑顔を忘れずに
「は?領土奪還作戦?なんじゃそりゃ。」
「なんか〜食糧不足で〜俺ら一般人も駆り出されるみたいで〜〜」
「その女子高生みたいな喋り方やめろ。」
「ゴホン。壁の外にレッツらゴーしねーといけねーみてぇでな。」
「えええええええええ。」
「つーわけで、拒否権なんてもの無いらしいから行くぞ。」
「えええええええええ。」
巨人を一体倒すのに平均30人は死ぬ。
それを聞いた上で、力もないただの一般人が巨人がいるこの壁の外へと投入させるのは、ひとつの理由しか思い浮かばない。
「ただの口減らしじゃねーか。」
目の前で巨人に喰われていく人々を見てそう思った。
「オイ!余所見してんな!!食われるぞお前!!」
「あーはいはい!!殺りますよー!!と!!」
亡くなった兵士の腰についていたからくりを自らの体に装着し、そのまま銀時と共に他の兵士の見様見真似で巨人へと立ち向かう。
最初はうまく扱えはしなかったが、徐々に慣れ始め数体倒す事が出来るまでとなった。
「太郎ォォォォォ!!そっち行ったぞォォォ!!」
「オッケェェェイ!!我が命にかえてもォォォ!!」
「それやめろ!!」
斬りつけても斬りつけても、またどこからか現れる巨人によって休まる時間が無い。
普段鍛えている屈強な兵士ですら、瞬く間に命が散る。
「クッソ、埒があかねー。どんだけいんだァ?」
「オイ天パ!!テメーも余所見してんじゃねーか!!食われろ!!」
「そりゃひでーんじゃねーの太郎くん!?」
「なら前を向け!!とりあえずは撤退の合図が来るまで出来ることはしとくぞ!!」
「合図なんて来んのかよこの状況で!!外に出てからどんだけ時間がたった!もう人間なんて数えられる程度しかいねーじゃねーか!!」
「分からない…分からないけど!帰れるまで生きなきゃいけねーだろーが!!胃拡張娘やメガネだって今頃心配してるぞ!!」
「ああ!?それならテメーだってマヨネーズの妖精やサディスト並びにゴリラが心配してんじゃねーの!?特にゴリラ!!」
「おぼろろろろろろろろろろ!!」
「どーいう意味だァァァァァァ!!」
巨人に集中し斬りつけつつ、会話をする。
銀時の発言に、近藤さんが泣き喚いてる子供の様な仕草を想像してしまい、巨人の腕を駆けてる最中吐いてしまった。
どこかしら、巨人が嫌な顔をした様に見えたがきっと気の所為だ。
「あ!?オイあっちで煙が上がってんぞ!」
「ああ!?」
「撤退だー!!」
「撤退の合図だ!帰れるぞ!」
「やった!!これで帰れる!!」
漸く安堵の時が訪れようと一時だけ気を抜く者がチラホラと窺える。
そして銀時と顔を見合わせ、最後の大仕事へと取り掛かった。
「退路は俺達が守る!!」
「さっさと走って壁の中にいる母ちゃんの乳でもしゃぶってこォォォい!!」
「また乳しゃぶらせんのかよ!!」
その言葉を聞き、俺達の活躍を見ていた人達は、歓喜の笑みを見せ礼を言い壁の中へ向けて走り出す。
数名の兵士は一緒に巨人を斬り倒そうと奮起。だが、恐怖が勝った者は、一般人と共に駆けて一足先に壁の中へと入っていった。
「ん?おいアイツ何やってんだ?」
「あ?って危ねー!!」
「ぐっ!」
「ヤツは俺に任せろ!!」
「頼んだ銀時!!」
今にも巨人に掴まれそうになった体躯のいい兵士を、からくりを駆使し担ぎ上げ壁の上へと上る。
体重オーバーなのか、からくりは軋みそして登りきった丁度に最後のガスを全て使い果たしてしまった。
「うっわ、セーフ…」
兵士を下ろし、下にいる戦友を見ると、巨人の項を削ぎ終わったのかこちらへと向かっているところだった。
そして、大きな音をたて壁の門は閉まる。
どうやら俺達が最後のようだ。
「あー…終わったー…。」
「長かったわー…つっかれたなぁもう。ああ、そうだ。お前大丈夫?」
「あ、ああ…助かったよ。立体機動装置が壊れたらしく動かなかったんだ。ありがとう」
「あーこれ、りったいきどうそうちって言うの?つーか、だからあそこでゴチャゴチャ何かしてたのか。」
「ったく、俺達が助けなかったら今頃巨人の腹ん中だぞ。」
「そうだな…すまない。だが、本当に助かったよ。君達には感謝している」
「なら何か礼を…」
「がめついなオイ。欲を出すな欲を。」
金髪の兵士は、憂いお帯びた顔から、ゆっくりと口元を緩めていった。
それを横目で見つつ、まだ催促をする天パに呆れしつこいと肘で腹を突く。
「ゔっ!!」
「…彼は、」
「大丈夫です。自業自得なんで。」
「太郎…テメー後で覚えてろよ…。」
「それにしても、先程の君達の活躍はとても素晴らしいものだったよ。多くの者が君達に救われただろう」
気を利かせ、話題を変えてくれたこの兵士は、当たり障りのない返事をした俺達に向けて笑みを深くした。そして、その青い目に見つめられること数秒間沈黙が流れた。
この場合、ろくなことを言い出す輩がまま多い。
「そしてこれは提案なんだが、よければ我々と一緒に戦ってはくれないか?」
「いやいや、え?何言ってんのこの人?」
「やべぇな、どうやらどっかに頭を打ちつけたらしい。」
「大丈夫だ、かすり傷はしているものの、頭に外傷はない。打ってもいないよ。」
笑顔でそう返されよく見ると目に強い意志が窺え、先程の言葉は本気なんだと悟り始める。
「いや、でも俺達ィ〜母ちゃんに知らない人にはついて行くなって口酸っぱく言われてるんで〜」
「そうそう!ついて行った暁には殺されてもおかしくない位イカレた母親なんでね〜!だからそのお誘いは…」
「私は調査兵団分隊長を務めるエルヴィン・スミスだ。…これでもう知らない人ではないだろう?」
色々思う所はあるけどまずは一つ。
「何か偉い人だったァァァァァァ!!」
第四話初対面では笑顔を忘れずに