陸の夢

□花が咲く〜紫〜
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才華達の出仕初日。才華は朝廷からの書状を横目で見て、すかさず準備をした。
「あら、姉様もう行くの?」
秀麗は少し驚いた。なにせ、書状に記された時刻はもっと後なのだ。だが、才華は書状を指で弾いて言った。
「秀麗と影月くんも来なさい。書状の時刻が間違ってるから」
『え?!』
二人の声が重なる。才華は得意気な笑みを浮かべた。
「どこの馬鹿だか知らないけど、私が悪夢の国試を知ってる事は全然考えて無いみたいね」
「あ、そうでしたね。才華さんはこの状況、予想してましたし」
「分かったわ姉様。すぐに用意するから」
才華は二人を見て、一瞬目を伏せた。
「姉様?」
「才華さん?」
この先に、何が起こるのか。体が震える。地獄のようなあの日々に戻ると考えただけで、冷水を浴びたように感じる。
「姉様!」
秀麗の声。顔を上げると、大好きな妹が笑顔を浮かべていた。
「大丈夫よ、姉様」
「そうですよ! 頑張りましょう、才華さん!」
影月も笑顔を向けてくれる。
「……そうね!」
大丈夫だと、確信できた。二人がいるなら。
「ありがとう、二人とも」
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