陸の夢

□家族との日々は続いて
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それから数年が過ぎた。譲葉は才華を連れて、李の木の下で琵琶を弾いていた。
「才華ちゃんはさ、あの話受けるの?」
譲葉が指しているのは養女の話だ。長年行方不明だった長子、邵可の帰還。それと共に持ち上がった、邵可を才華の後見にしようという動き。
「はい。どうせ紅家のお爺さん達は厄介払いのつもりなんでしょうけど、私としてはむしろ望むところですね。一度も会ったことのない方ではありますが、黎深さんが事あるごとに話題にするせいで全然そんな気はしませんし」
「……才華ちゃん……」
才華はまだ十歳になったばかり。なのにこの理解力はなんなのか。譲葉は肩を落とした。
「ごめんね、君をこんな事に巻き込んで」
「別に構いませんよ? ……それに譲葉さんが気になさる事はありません。これは私が自分で選んだ人生です」
才華の笑顔は変わらなかった。譲葉は琵琶を弾く手を止めて、その頭を撫でた。
「泣きたいときは、泣いて良いんだよ。才華ちゃん」
才華は首を傾げた。長子の養女になっても、紅家の三兄弟は仲が良いのだから、問題ないだろう。黎深など、自分を邵可に会いに行くための口実に使うのではないかと言ったら、譲葉はサッと目を逸らした。黎深ならやりそうだと思ったのだろう。才華もやりそうだと思ったから黎深の名を出した。そうされても、別に傷付きもしない。可愛くない子供である自覚はある.......と思っていたら、譲葉からもう一度頭を撫でられた。
「才華ちゃんは可愛いよ。誰がどう言おうとね」
「.......ありがとうございます」
どう返そうか迷って、結局お礼を言った。これを本気で言うのが紅家流。本当に身内に甘い家だ。
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