陸の夢

□家族との日々は続いて
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それから数ヶ月。相変わらず才華は例の三人に毎日世話をされていた。
「才華、今日は新しい玩具を持ってきたよ!」
黎深が元々ぐずぐずの顔を更に崩して何かを取り出す。才華は内心首を傾げた。小さな樽。細い溝が側面にいくつも空いている。
「この付属の剣で刺すとね、ほら!」
とても精巧な作り物の生首が飛び出した。
(……いや、それ普通喜ばないから)
内心そう突っ込みつつ、才華はニコニコとしていた。黎深は子供をあやすのが苦手らしく、しょっちゅう妙な物を持ってくる。
(.......まあ、いいけど)
前世のあれこれがあって、才華は男嫌いだ。それでも、黎深や玖琅を嫌いだとは流石に思えなかった。だって世話してくれてるし。こういうのも、本気で、喜ばれると思ってやっているんだろうし。普通の赤子なら泣く。才華は普通ではない。だから泣かないで、きゃっきゃと笑う。そんな彼女を見て、譲葉や玖琅が驚愕の表情を浮かべた。
「黎兄上、才華から離れてください。今すぐに」
「なんだ玖琅、お前才華を私から奪う気か」
「違います。ただ、才華が黎兄上の影響で奇行に走らないか心配なだけです」
「……うん、ぼくも心配。黎深を見てて笑えるって相当だよ。才華ちゃん、大物になるね」
「煩いぞ譲葉!」
騒がしい三人に、才華は内心苦笑した。
(仲良いなあ)
家族の仲が良いのは幸せなことだ。隣で大騒ぎされても泣かずにニコニコしている才華に、譲葉はちょっとどころではなく驚いていた。
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