お話し・ぱられる
□君は素敵なボーイ
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バタバタ、と屋上を出ていく若い背中を俺は笑いながら見送る。
(冗談なんかじゃないよ、土方クン。)
彼が入学してきた当初からその存在は知っていた。男なのに美人な新入生がいると有名だったから。
男の美人ってどんな奴なのかと半分面白がりながら過ごしていたある日、廊下で1人夕日に照らされる彼を見かけた。
そして、恋に落ちた。
それはもう、笑っちゃうくらい簡単に。
いままで誰にも落ちなかった俺が、本当に一瞬だった。
どこまでも綺麗で、どこまでも真っ直ぐな目をした彼....土方十四郎に。
この思いを叶えようとは思わなかった。教師と生徒、そもそも男同士。叶うわけがない。
だから、諦める代わりと言っちゃあなんだけど、彼のことをずっと見ていた。それくらいなら許されるだろう?
最初は清廉な黒髪美人で、でもすぐに金髪になったあの子はそれでも尚綺麗だった。
一匹狼を気取るくせに他人をほっとけない優しい性格。そのくせ、不器用で損をする。
賢いのにどこか抜けているところが可愛い。
見てるだけでくるくる変わる表情がまるで万華鏡のような土方クンが可愛くて綺麗で、幸せな気分に浸りながら屋上でサボっていたある日。
彼は来た。
ポカンとした、無防備に過ぎる表情で俺を凝視していた。
それが可愛くておかしくて、思わず笑みをこぼしながらどうしたのって聞いたら真っ赤になってにげちゃって。本当に可愛かった。
その日以来、彼が更に不良っぽくなっていった。
最初はどうしたのだろう、と思っていたけど、見ているうちにわかってしまった。
あの土方クンが、俺に好意を寄せていることを。
嬉しくて嬉しくて、気づいた日は一日中ニヤニヤしていた。生徒に気味悪がられたけど気にしない。
だってあの可愛くて綺麗な彼が、俺のことを好きだなんて。
にやつかずにはいられない。
そして、今。
俺の言うことに一々反応して、俺の答えを待つ不安に揺れる君は本当に綺麗で、儚げで。
思わずしばらく見とれてしまっていた。