★連載★

□world&world
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重い瞼。軋む関節。


肌寒い空気に身震いをして、リズナは目が覚めた。
ゴツゴツした岩の地面に座り、同じくゴツゴツした岩の壁にもたれて寝ていたのだ。
寝ていた、といってもこのような状況で熟睡できるはずも無く、
浅い眠りだったように感じる。


静まり返った洞窟内は、天井から滴る水滴の音と、吹き抜ける冷たい風の音だけが響いていた。
まだ奴隷達は寝ている様子だ。
いつになったら作業を再開するのか、時計も無いのにどうやってスケジュールが進むのかも分からない。

朝になったら皆自然と起きるのだろうか。
それとも、朝を知らせる何かがあるのだろうか。


リズナの傍らには、自分と同じように、座ったまま壁に背を預けて目を瞑っているジェイドがいた。
その代わりに、アスベルが起きていた。



(....すごいな、アスベルは。あたしには、真似できない。)




アスベルは、少し離れた所で、体術の型の動きを繰り返していた。
目の前に敵がいる事を想定しているような動き。
それは機敏で、空気を切るように素早かった。
真剣な表情で、ひたすら体を動かしている。眠たさを誤魔化す為なのか、それが日課なのか。



目を覚ましたリズナの視線に気付き、アスベルは動きを止めた。
汗を拭いながら、リズナの向かいへ腰を下ろす。



「体力は温存しておいた方が良いとは思ったんだけどね。寒いし、眠たいし....それに、体を動かすと
精神統一にもなるから、つい、ね。」



笑いながら言い訳をするアスベルからは、先程の真剣な表情の影は感じられない。
普段は温厚で正義感が強く、真っ直ぐでちょっと抜けてる普通の青年。
だが戦いの場や、人道に背く事に対しては表情がまるで別人のように変わる。


鋭い剣幕と、隙の無い構え。

剣術も体術もこなすアスベルが、少し羨ましかった。



リズナには斧しか無い。
器用に剣は扱えないし、弓矢や銃等も挑戦した事はあるが全く使え無かった。
術の素養も無い。

ギルドには、フレンやカイルのように剣術も魔術も使える者がいれば、
ハロルドやティアのように攻撃術も回復術も扱える者もいる。

だが、自分には攻撃しか能が無い。
武器も、斧や槌しか使えない。


ギルドの優れたメンバー達を見ていると、自分が劣っているような、自分だけが役立たずのような気がして
行き場の無い焦燥感がふつふつと沸いてくる。












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