★連載★

□world&world
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広い操舵室でジェイドは腕を組んだまま操舵席に歩み寄る。


「準備はできましたか?」


「も、もちろんです。ボクに不可能はありません!」


やたら大きな黒い海賊帽を被った褐色肌の子供が震える声で返事をした。
華奢で小柄で短髪、自身を「ボク」と呼称する事から男の子のようにも見えるが、チャットはれっきとした女の子だ。

「初めてなのでしょうが、多少の無茶は承知して頂けますね?」

フッと鼻で笑い、慣れた仕草で眼鏡の位置を正す。
操舵席に片肘を付き、チャットの顔を覗き込むと、彼女はビクッと体を強ばらせた。


「む、無論ですっ...。でも、あの、いざという時は...」

「もちろん、助力致しますよ。痛めつける為にお願いした訳ではありませんからね。」

「...っ。タイミングは、そちらにお任せします。ジェイドさんの合図に合わせますから。」


チャットの額にはじんわりと汗が滲んでいる。


「.....では、侵入致しますよ!」


「...アイアイサー!」
























ゴドン、と船体が激しく揺れた。
ガラゴロと岩が砕けるような轟音が響き、船内にいる団員達はよろけたり転倒する者もいた。



「...揺れ、収まったな。」

アスベルが呟く。傍らにいたソフィは上手く受身をとって立ち上がっていた。

「大丈夫なの?この船。大きな氷にぶつかったんでしょう?」

ソフィは心配そうに尋ねた。

「船長が大丈夫って言ってたけど、どうかな」とアスベルも心配そうに言う。











「はぁああ...流氷に突っ込むなんて、初めてでしたが...成功のようです。やはり、ボクのバンエルティア号は優秀でしたね!」

操舵席に座ったまま、チャットは満足そうに頷いた。

「ご協力感謝致します。助かりました、今のタルタロスでは流氷がひしめく海には出られそうになかったものですから。」

艦体に傷が付きますし、と笑って付け足す。ジェイドは目を細めて、睨みつけるチャットに手を振った。


「ご自身が所有する艦体に傷を付けたくないから、バンエルティア号を使ったのですか!?」

「いやいやご冗談を。我がタルタロスはバンエルティア号のように優れてはいませんからねー。陸地には強いのですが。妥当な役割分担でしょう?」


納得いかない様子のチャットに背を向け、ジェイドは操舵室を後にした。


「.....はぁ。」


小さくため息を漏らす。
何を言ってものらりくらりと上手くかわされ、動じないジェイドには強く出られない。


「ジェイドさんの方がよっぽど悪党じゃないですか...。」




チャットは数日前の出来事を思い返す。











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