あらがうもの

□推測とスキャンダル
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〜レギュラス視点・続き〜


ウィンキーは亡きクラウチ夫人の代わりに、バーティのことを息子同然に思って世話をしていたのだろう。
彼女は幽閉の身のバーティを哀れんで、彼が好きなクィディッチを観戦させてやってほしいと主人に頼みこんだのではないか。

でなければ、クラウチ・シニアが屋敷しもべ妖精を連れてワールドカップを観戦しに来るわけがない。
服従の呪文で大人しくさせているとはいえ、バーティに監視をつけずに1人にするほどクラウチ・シニアは耄碌していないはずだ。

そこまで考えたとき、リュックサックの薄暗い内部に光が差し込んだ。なにやら思いつめた表情をしたフィービーが、こちらを見下ろしている。

彼女も芝居とは異なる展開になったことに疑問を抱いたのだろう。レギュラスが猫用リュックサックから出るなり、フィービーは単刀直入に切り出してきた。


「闇の印の下にウィンキーが居合わせたのは、偶然じゃないと思うよね?」

「あれは間の悪い偶然で片がついたはずです」


実際、あまりにも間の悪い偶然だったと思う。

クラウチ・シニアは官職から退いても、死喰い人を見過ごせなかったに違いない。
バーティを見張っていろとウィンキーに言いつけて、彼は暴動の鎮圧に乗り出したのだろう。

一方、バーティはアズカバン行きを逃れた死喰い人たちがキャンプ場で騒いでいると知って、怒り狂ったはずだ。彼らは自由に動けるのに、主人を探そうとしなかったのだから。

バーティの様子が変だと察知したウィンキーは、騒動から遠ざけるためにバーティを連れて森に行ったと思われるが、ポッターが落とした杖を彼に拾わせる結果になってしまった。

献身的な屋敷しもべ妖精を失ったクラウチ・シニアは、バーティを抑えていられなくなるだろう。

近日中にバーティは完全に自由の身となり、例のあの人のもとに馳せ参じるはずだ。

主人を探し出す前に、バーティは自分の父親を手にかけるかもしれない。
三大魔法学校対抗試合の審査員ではないクラウチ・シニアは、用無しと見なされる可能性が大きい。

クラウチ・シニアが不審死を遂げた、もしくは失踪したと報道されたら、フィービーはきっと動揺する。

そのとき、レギュラスは彼女に話すつもりだ。クラウチ・シニアが芝居より早く殺されることは予測していた、と。

なんで今まで黙っていたのかとフィービーに問われたら、クラウチ・シニアは遅かれ早かれ命を奪われる運命にあったと言い返せばいい。

セドリックを救おうとしている彼女はそれを聞けば、レギュラスに強い不信感を抱くはずだ。

レギュラスを疑うことで、フィービーのクラウチ・シニアに対する罪悪感が薄れるといいけれど。
クラウチ・シニアを間接的に辞任に追い込んで死期を早めた責任を負うべき人物がいるとしたら、それはフィービーではなくレギュラスだ。

不満そうに唇を尖らせるフィービーを見上げながら、レギュラスは「それより」と話を変えた。


「どうしてウィンキーの名前を知っているのですか?」

「クラウチ・シニアがウィンキーに命じて貴賓席の席取りをさせていたから、彼女のことを知ったんだよ。結局クラウチ・シニアは貴賓席に来なかったけどね」


レギュラスは興味なさそうな風を装って「そうでしたか」と答えたけど、内心では動揺していた。

ウィンキーが取っていた席には、透明マントか目くらまし術で姿を隠したバーティが座っていたかもしれない。

ポッターの席とウィンキーが取っていた席は近かったかと聞きたかったけど、探りを入れたらフィービーに考えるきっかけを与えてしまいそうなのでやめておく。
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