あらがうもの
□隠れ穴へ
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空が紺碧に澄み渡った夜の7時頃、隠れ穴が急に賑やかになった。金獅子荘に行っていたロンとフレッドとジョージが、帰ってきたようだ。
家出した双子は隠れ穴に戻ってこないのでは、と不安に思っていたのでフィービーはほっとした。
ジニーが手紙で教えてくれたのだが、フレッドとジョージは悪戯専門店を開きたいと母親に訴えたけど、モリーさんに反対されたようだ。
双子の息子たちが魔法省に就職することを望んでいたモリーさんは、彼らがO.W.L試験で3科目しか合格しなかったことに、大層腹を立てていたらしい。
その上、モリーさんは双子の部屋を掃除したときに出てきた、フレッドとジョージが発明した悪戯おもちゃやひっかけ菓子の注文書の束を燃やして、「もう何も作っちゃいけません」と言い渡したという。
それで完全に頭にきたフレッドとジョージは家を出て、金獅子荘に転がりこんだ。
パーシーをうっとうしがっていたロンも双子の兄達についていき、ハリーたちと夏休みを過ごしていると聞く。
「よう。フィービー、ハーマイオニー、元気にしていたか?」
ゆでたじゃがいもを盛った皿を運ぶ、赤毛のたくましい青年が声をかけてきた。
フレッドなのか、ジョージなのか。悪戯っぽい笑い方までそっくりだから、相変わらず見分けがつかない。
「こんばんは、フレッド、ジョージ」
「やっほう、フレジョ」
「「足して1つにするなよ」」
声を揃えて抗議した双子に、セドリックが「やあ」とあいさつをした。
「やあやあ、ミスター優等生。宿題はもう終わらせたかな?」
「その呼び方はやめてくれないか?」
半ば諦めた感じのセドリックに対し、双子の片割れは軽く揶揄するように応じる。
「間違ってないんだから別にいいだろ。俺らはお袋から散々、『セドリックは10ふくろうだったのよ!』って聞かされ……」
「そのことなら、フィービーから手紙で教えてもらったわ」
熱のこもった声で双子の言葉をさえぎったハーマイオニーは、さらに話し続けた。
「監督生とクィディッチのキャプテンを兼任しながら、優・Oを10個もとるなんて並大抵の努力ではできないでしょうね。本当にすごいわ。もしよければ、どんな試験対策をとったのか教えてもらえると……」
周囲の視線に気づいたらしく、口を閉じたハーマイオニーは頬を赤らめてうつむいた。
微笑んだセドリックは、「僕の試験対策が参考になるなら、あとで教えるよ」と答えた。
そのやり取りを見たロンは、双子の兄より険悪な顔をしている。試合でハリーを負かしたやつと馴れ合うなよ、と思っているのだろうか。それとも……。
「やあ、ハーマイオニー、フィービー、ジニー」
近寄ってきたハリーに声をかけられた途端、ジニーは飛びあがってフィービーの背中に隠れた。
ジニーはハリーの誕生日パーティに出席したらしいので、彼と普通に会話できるようになったのかと思ったけど、まだ道程は遠いようだ。