あらがうもの

□選抜とお茶会
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先学期末にホグワーツ特別功労賞を授与されたセドリックは、滅多に脚光を浴びることのないハッフルパフの英雄的人物になった。

そして今学期、監督生とクィディッチのキャプテンに就任して、更に箔がついたセドリックのとどまるところを知らない人気は、2週目の土曜に行われたハッフルパフ・チームの選抜で、目に見える形となってあらわれた。
同寮生の半数が名乗りをあげたのではないかと思うほどの人数が、競技場に押し寄せた。選抜は午前中いっぱいかかりそうだ。

キャプテンとしての初めての試練を迎えたセドリックはやや緊張した面持ちで、集合した生徒に呼びかけた。


「えー、これからハッフルパフ・チームの選抜を始めるよ。人数が多いから、まずは飛行テストを行うことにする。10人1組で競技場を1周して……」

「キャーッ! キャプテンのセドリックもかっこいい!」


見物人が集まりつつある観客席ではなく、候補者の中から黄色い声があがった。

箒を持った男子生徒の大半はしらけた顔になり、中にはスミスのように嫉妬をあらわにする者もいる。

フィービーがまずいなと思ったとき、赤みのかった金髪をひとつに括ったオスカーがなだめるように「はいはい」と言った。


「クィディッチが目的じゃない子は、怪我をする前に観客席に行ったほうがいいぞ」

「キャプテンじゃないくせに偉そうにしないでよ、サマービー」

「イスメネ、あんたのほうこそ引っ込みなさいよ。セドリックの説明を耳障りな声で邪魔するなんて、ほんと迷惑」


言い争いを収めるためにセドリックが鋭くホイッスルを吹くと、頬を赤らめた女の子たちは甲高い声で騒いだ。
飛行テストに移っても彼女たちはキャーキャー笑い転げるばかりだったので、うんざりした面持ちになったセドリックは競技場から退出するように言い渡した。

純粋に選手になるために来た女の子もいたようで、6年生のベリティ・ブルックは抜群のコーナリングを披露し、ジャクリーン・リンドは2年生だけど小柄な体格を生かした素早さが目を引いた。
フィービーは飛行テストで競争相手の9人を飛び負かした。

最後まで残ったチェイサー候補6名の中に、同じチームで戦ったヒューはいなかった。彼は失恋のショックから立ち直れず、選抜に出られる心境ではなかったようだ。

そして4対4のミニゲーム形式で行われるチェイサーの選抜が始まった。ゴールを守るキーパーはいないけど、味方チェイサーはライバルなので連携を取るのは思った以上に難しい。

7年生のゲイリー・ダビンズはフィービーや2年生のジョン・エドワーズにパスを回さず、自己アピールするためにクアッフルを抱えこんで飛び出し、新しいビーターになったベリティの標的になった。

ベリティはポニーテールにした金髪とそばかすが活発的な印象を受ける美人だけど、両腕にはしっかり筋肉がついており、狙い澄まして打ちこんだブラッジャーをダビンズの後頭部に食らわせた。

ダビンズは途中退場こそしなかったものの飛び方がおぼつかなくなったので、フィービーは敵チェイサーに急旋回や先回りを仕掛けてクアッフルを奪うことに専念し、すばしっこいジョンにゴールを任せた。

ビーターに返り咲いたオスカーのサポートもあって、6年生と5年生と4年生の上級生チーム相手に勝利をあげることができた。


ほかのミニゲームを見比べたセドリックは、チェイサー候補者たちの前で発表した。


「ハッフルパフ・チームの新しいチェイサーは、ニール・キャッドワラダーとザカリアス・スミスとフィービー・ディゴリーの3名に決めた」


キャプテンが自分の妹を選んだことに対する非難の声があがったけど、セドリックは断固とした口調で「これが最終決定だ」と言い切った。

最後まで文句を言っていたスミスの金髪頭を大きな手が押さえつけて、がしがしと乱暴に撫でた。


「これからチームメイトとして一緒に戦うんだから、仲良くやろうぜ。俺は4年生のニール・キャッドワラダー。よろしくな」


快活に笑ったニールはむしろビーターに向いていそうな大柄な体格と、麦わら色の短髪と角張ったあごの持ち主だ。

自分より屈強なニールに逆らうのは賢明ではないと思ったのだろう。スミスはふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

フィービーはこれからスミスとの人間関係でニールに気苦労をかけそうだと思い、1学年上の彼と握手をかわして、「こちらこそよろしく」とあいさつした。
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