あらがうもの

□選抜とお茶会
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手を振り返してハリーたちを見送ったフィービーは、マラソンを続けながら焦りをおぼえた。

少し言葉をかわしただけで、グリフィンドール・チームの安定感やまとまりの良さが伝わってきた。ウッドが鍛えあげたチームの団結力は、ハリーが持っているファイアボルトより脅威になりそうだ。スミスと馬が合わないとか言っている場合ではない。

気を引き締めたフィービーは1時間ほど走ったあと、食べ物の絵画が飾られた地下の廊下に引き返し、樽が山積みになった寮の入口にたどり着いた。

談話室に戻ったフィービーは感じの悪い態度を取ったことを、同室者たちに謝ろうとしたのだが。


「ごめんなさい、フィービー。私が間違っていたわ」


涙目になったマーサが駆け寄ってきて、先に謝った。


「フィービーが酷い目に遭うことばかり予言する先生を信じるなんて、友達のすることじゃないわよね」


とげのあるマーサの言葉を聞いたハンナとスーザンは怒った表情になり、丸テーブルに広げていた宿題を手早くまとめて女子寮に向かった。

フィービーがマラソンをしている内に、新たな揉め事が起きたようだ。
友人関係がこじれたことにフィービーは頭を抱えたが、元はといえば自分が短気を起こしたのが原因なので、冷静になるよう自らに言い聞かせた。


「マーサが味方についてくれたことは嬉しいけど、さっきは私が言いすぎたと思っている。だからハンナやスーザンと仲直りして、4人でホグズミード村を回ろうよ」


顔をしかめたマーサは、首を横に振ってから口を開いた。

マーサは妹のことで相談にのってくれたトレローニー先生を信じていたけれど、有名な予見者のカッサンドラ・トレローニーの曾々孫であることを自慢する先生に、疑いを抱くようになったという。


「トレローニー先生は純血主義者じゃないってハンナとスーザンは言っていたけど、血筋で個人の能力が決まるって考え方は吐き気がするのよ。ハンナとスーザンまで、自分は予見者の素質を秘めた血を引くから優れているなんて考えに染まってしまったら、彼女たちと仲良くし続ける自信がないわ」


マーサはそう言っていたけど、純血主義を忌み嫌うハンナとスーザンが血筋を重視する考えに染まるとは、本気で思っていないはずだ。

ハンナとスーザンはマーサの本心をわかっていると思うが、彼女たちは翌朝もフィービーとマーサを避けた。さらに薬草学の授業ではアビーやトリクシーと組んで、作業しながら何やら小声で話していた。

自分のことを悪く言われていると思ったのか。マーサはふっくらしたピンクの莢を持った手がふるえ、桶に入るはずだった花咲か豆が温室の床に散らばった。その瞬間、つやつやした豆は一斉にぱっと開花した。


「気をつけて、ミス・ジョイス。ウィーズリーも。気をつけなさい!」


スプラウト先生に注意を受けたロンは、マーサと同じようにぶすっとしていた。
ハーマイオニーがうなだれているところを見ると、あちらも荒れ模様らしい。

間に挟まれたハリーは助けを求める視線をフィービーに投げかけてきた。
フィービーは離れて作業するハンナとスーザンを見やって、こっちも手一杯だと伝えた。


「ホグズミード行きの許可証をハロウィンまでに私に提出してください。許可証がなければホグズミードもなしです。忘れずに出すこと!」


薬草学の授業が終わったとき、スプラウト先生はハッフルパフ生を呼びとめて言った。

初めてのホグズミード行きとハロウィン・パーティを、みんなで満喫したい。
けれど女友達同士の深刻な喧嘩は初めて体験するフィービーは、どうしたら仲直りにこぎつけられるのか見当もつかなかった。
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