あらがうもの

□選抜とお茶会
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ハンナとスーザンとマーサは、トレローニー先生の崇拝者になってしまった。
昼休みも北塔に入り浸る同室者たちは一緒に行きましょうと誘ってくるが、フィービーは休み時間に死の宣告をされるのは嫌だったので辞退した。

そんなわけで最近のフィービーは、セドリック達かルーナかグリフィンドールの3人組の誰かしらと昼食をとっている。

ハーマイオニーは怒り半分同情半分といった様子で、「昼休みに北塔へ行くのは時間の無駄よ」と言い切った。


「パーバティとラベンダーもあの先生の崇拝者で、みんなが知らないことを知っているわよって言わんばかりの、鼻持ちならない得意顔をして北塔から戻ってくるのよ。あてずっぽうの予言を吹きこまれているだけなのに」

「ハーマイオニーだって変身術の授業でピッチャーをイグアナに変えたとき、マクゴナガルから点をもらって鼻持ちならない得意顔をしていたじゃないか」


テーブルの向かい側でシチューのおかわりを皿によそっていたロンが、皮肉っぽい口調で割りこんできた。


「私は寮に貢献しているけれど、パーバティとラベンダーの行動は生産性がないわ。2人のハリーに対する話し方は、まるでハリーが臨終の床についているかのようじゃない」


親友2人がまた口論を始めたから、ハリーはうんざりしたように、チキンソテーにフォークを突き立てた。

なんでもロンは日に日に衰弱するプーカが安らげるようにするため、クルックシャンクスを談話室に連れてくるなと、ハーマイオニーに言い渡したらしい。
ハーマイオニーは自分の猫だけが談話室に出入り禁止になるのは納得いかないと反論し、プーカが弱っているなら男子寮で休ませてあげるべきだと反論した。
それに対しロンは具合の悪いプーカを男子寮に放置しろだなんて、よくもそんな冷酷なことが言えるなと怒り、険悪な状態が続いているようだ。


友人関係に悩みを抱えるフィービーにとって、クィディッチがストレス発散の場だったのに、そこでも揉め事が起きた。
スミスがチーム内にディゴリーが2人もいるのはややこしいと言って、セドリックのことはキャプテン、フィービーのことはミス・ディゴリーと呼ぶせいだ。


「なあ、ザカリアス。みんなファーストネームで呼び合っているんだから、君も足並みを揃えてくれないか?」


セドリックはキャプテンとして命じることもできるのに、スミスに無理強いすることはしたくないのか、辛抱強く頼んでいた。


「そこまで言うなら、セドリックの要請を受け入れてやるよ。でも、ミス・ディゴリーには頼まれていない」


懇願されないと名前を呼んでやらないという、スミスの高慢な態度は鼻持ちならない。
けれどフィービーは選抜のときのオスカーの言葉を思い出して、文句をぐっと堪えた。
呼び名ごときで喧嘩して練習ができなくなったら、セドリックの足を引っ張りたいスミスの思うつぼだし、何よりチームメイトに迷惑をかけてしまう。


「クィディッチをするときは、ファーストネームで呼び合おうよ。ザカリアス」

「それじゃ意味ないだろ。普段ファミリーネームで呼んでいたら、敵チームの連中に僕と……フィービーの相性が悪いことがばれるじゃないか」


フィービーの名前を呼ぶのに余程抵抗があるのか、スミスは顔を真っ赤にした。
唐突に手を叩いたセドリックは鋭い声で、「練習を始めるよ」と言った。
兄のおかげでフィービーは競技場以外でも、スミスと名前で呼び合う事態にならずに済んだ。

チーム内での呼び方の問題は片付いたけど、スミスはセドリックの作戦にいちいち異議を唱えるからチームの雰囲気は一向に良くならず、兄はキャプテンとしての自信をなくしかけている。

人間関係のトラブルに加え、先学期よりはるかに多い宿題をこなしながら、レギュラスから閉心術の再特訓も受ける。フィービーの疲労は溜まる一方だったが、日頃の憂さを晴らす報せが10月の15日に発表された。
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