あらがうもの

□選抜とお茶会
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最後に行われるキーパーの選抜は、候補者が新しいチェイサーのペナルティ・スローを何回守れるかで判定する。

6年生のグレン・フィルポットは先学期にチームを追い出されていなければ、キャプテンに就任できたかもしれなかったので、セドリックに対してあからさまに敵意を燃やしていた。

フィービーはできれば先学期の途中から同じチームで戦った、4年生のガネーシャ・シンに再びキーパーになってほしかった。
だけど手心を加えると選抜を行う意味がなくなってしまう。フィービーは同級生のリチャード・ジャーヴィスがトライアルに臨んだときも、全力投球した。

ゴールを5回守ったのは今のところガネーシャしかいなかったが、最後にトライアルを受けるフィルポットが6回セーブすると、問題を抱えたチームが結成されてしまう。
鬼気迫る投球をするフィービーとは反対に、スミスはこれまでフェイントやスピンといった技を披露してきたくせに、フィルポットにだけはストレートなペナルティー・スローを放っている。

普段ならスミスの言動にいちいち反応しないけど、クィディッチは別だ。

フィービーはニールがゴールポストの前に向かったとき、スミスに声をかけた。


「グレンと仲がいいからって、守りやすいスローを投げないでよ。これは選抜なんだから」

「ディゴリーのほうこそ、シンのトライアルのときに緩いスローを放っていたじゃないか」

「少なくとも、スミスのさっきのスローより速かったと思うけど」

「兄貴のえこひいきでチームに入ったくせに大口叩くな」


まだ言うかと苛立ったフィービーがスミスに詰め寄ったとき、オスカーが間に入った。


「フィービー、ザカリアス、喧嘩はやめろよ。偵察に来ているほかのチームに、ハッフルパフ・チームの新しいチェイサーは仲が悪いって、チェックされているぞ」


舌打ちをしたスミスは2回目のペナルティー・スローをするために、ニンバス2001にまたがって浮かんだ。

スミスを見送ったオスカーは苦笑して言った。


「フィービーのほうから突っかかると、ザカリアスの思うつぼだぞ」

「でも選抜なんだから、公平に投げてもらわないと困るよ」


オスカーは片眉を吊り上げて「たしかに困るな」と言いながら、意味ありげな視線をフィービーに送った。ほかにも問題があると言いたげだ。

はっきり指摘しないなら今は重視する事柄ではないのだろう。フィービーはそう判断して、地上に戻ってきたスミスと入れ替わりに、2度目のペナルティー・スローに挑んだ。

結局フィルポットがゴールを守れたのは4回だったので、ガネーシャがチームに復帰することに決定した。

選ばれなかった生徒の不満や苦情に叫び返したセドリックは、声が枯れてしまった。


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「聞いたところによれば、ルーピンはシリウス・ブラックの家に居候しているらしい。自活できないルーピンは、ウィーズリー以上の貧乏人だ」


10月になってもまだ右腕に包帯を巻いているマルフォイは、ルーピン先生の粗探しに精を出していた。
ところがマルフォイの思惑とは裏腹に、彼が流した噂を曲解した一部の女子が盛り上がり、ルーピン先生とシリウスの人気は急上昇している。

ゴシップによる注目度に関わらず、闇の魔術に対する防衛術は、ほとんどの生徒の一番人気の授業であることに変わりなかった。

スーザンは教材で使われるグロテスクな闇の生物が(血で染められた帽子をかぶった赤帽鬼や、鱗のある猿のような外見をした河童など)好きではないように見えたが、ルーピン先生の講義は面白くてためになると言っていた。

魔法生物飼育学は毎回レタス食い虫の世話ばかりなので、人気が下がる一方だった。

ほかの魔法生物も習いたいとフィービーは催促してみたが、マルフォイが怪我をした事件で自信をなくしたハグリッドは、学校の理事が指定したレタス食い虫以外は手を出せないと答えた。

期待していたほど楽しくなくても、フィービーにとって飼育学は占い学よりはるかに有益な授業だ。

トレローニー先生はフィービーのカップに貼りついたお茶の葉の形や印を解読するたび、レンズで拡大された目に涙をいっぱい浮かべてフィービーを見てくるから、いい加減嫌気が差してきた。
占い学に不満を持つフィービーに共感してくれるのは、ハーマイオニーとハリーくらいだ。
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