あらがうもの

□スリザリンの継承者
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〜レギュラス視点・続き〜



「君が僕を襲ったとき、どうして君が力を失ったのか、誰もわからない。僕自身にもわからない。でも、なぜ君が僕を殺せなかったのか、僕にはわかる。母が、僕をかばって死んだからだ。母は普通の、マグル生まれの母だ」


話しているうちに感情が高ぶったポッターは去年見た闇の帝王のなれの果てを、落ちぶれた残骸だの汚らわしいだのと罵った。

怒りで顔を歪めたリドルは無理やり、ぞっとするような笑顔を取り繕った。


「そうか。母親が君を救うために死んだ。なるほど。それは呪いに対する強力な反対呪文だ。わかったぞ──結局君自身には特別なものは何もないわけだ。実は何かあるのかと思っていたんだ。ハリー・ポッター、何しろ僕たちには不思議に似たところがある」


リドルがポッターの内部にある自身の断片に気づいたのではないかと思い、レギュラスはひやりとしたが。
フィービーは闇の帝王の前身に対してきちんと閉心術をしていたようで、リドルはポッターが帝王の手を逃れたのは幸運だったからに過ぎないと結論づけた。


「さて、ハリー。すこし揉んでやろう。サラザール・スリザリンの継承者、ヴォルデモート卿の力と、有名なハリー・ポッターと、ダンブルドアがくださった精一杯の武器とを、お手合わせ願おうか」


リドルが蛇語で呼びかけると、スリザリンの巨大な石像の顔が動いて、口が大きく広がった。
その奥から這いだしてきた、巨木のように太い胴体を持つバジリスクが石の床に落ち、振動が足から伝わってきた。


「フィービーとセドリックはジニーを連れて、なんとか逃げて」


指示を出すポッターの声が震えているのを聞き取って、リドルは嘲笑った。

フィービーとセドリックは意識のないウィーズリーの娘を両脇から抱えて、ポッターがいる場所とは反対の壁際に避難した。

リドルが再び蛇語を発して、毒蛇の王をポッターにけしかけたとき。


「オブスクーロ!」


目を直視するのを避けるためか、床を見据えたセドリックがバジリスクの頭部に杖を向けて、目隠し呪文を叫んだ。

リドルは赤い光線を飛ばして空中でセドリックの呪文を相殺し、不機嫌を隠さない声で「レギュラス」と呼んだ。


「ヴォルデモート卿とハリー・ポッターの決闘を邪魔する、無粋な輩を殺せ」

「承知しました、ご主人様」


大人しくしていればよかったのにとレギュラスは心の中でため息をついたが、これはチャンスだと思い直した。
レギュラスが秘密の部屋から脱出する際、セドリックに妨害される可能性を取り除けるし、フィービーから都合の悪い記憶を消すことができる。

少女たちをかばうように前に出たセドリックは、必死な形相と杖をこちらに向けてきた。

懇願するように眉を下げたフィービーに見つめられて、レギュラスは軽く失望した。

彼女は信じるとか言っていたのに、心の底では元死喰い人の自分を疑っていたようだ。
それが正しい判断なのに釈然としない──もやもやした気分を抱えたレギュラスは、毒蛇の王が血の海になった床をのたうち回る音を聞いて、我に返った。

奇妙な旋律を歌う不死鳥がくちばしでバジリスクの目玉を潰したらしく、リドルが蛇語で叫ぶ声が聞こえた。


「助けて。助けて。シリウス! リーマス!」


ポッターはなりふり構わず救援を求めながら、大きく一振りして床を掃くバジリスクの尾を辛うじてかわした。

フィービーとセドリックとリドルの注意がポッターに向いた隙をつき、レギュラスは無言で失神呪文を放って、ディゴリー兄妹を気絶させた。

こんなことになるなら、フィービーが夜中に寮を抜け出して禁じられた森に行っていたとセドリックに話して、さっさと家に送り返せばよかった。
試験が終わるまでリドルが行動を起こさない保証はなかったのに、「今回は私がぶっちぎりで学年トップの成績をとるから」というフィービーの宣言を真に受けてしまった。
自分が見張っていれば彼女を危険にさらすことはないと、思い上がった結果がこの様だ。

後悔を抱えたレギュラスは冷めた目で、ポッターが組分け帽子からまばゆい銀の剣を取り出した瞬間を眺めた。
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