あらがうもの

□スリザリンの継承者
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〜レギュラス視点・続き〜



「それはどういうこと?」

「まだ気づかないのかい? ハリー・ポッター? ジニー・ウィーズリーが秘密の部屋を開けた。学校の雄鶏を絞め殺したのも、壁に脅迫の文字を書きなぐったのもジニー。スリザリンの蛇を、4人の穢れた血と1人の混血とスクイブの飼い猫に仕掛けたのもジニーだ」


ポッターはがく然とした様子で「まさか」と呟き、セドリックは真っ青になって言葉を失った。

「そのまさかだ」と答えたリドルは、無意識のうちに犯罪に手を染めるウィーズリーの娘の日記が前よりずっとおもしろくなったと言って、内容をそらで読み上げた。

静かに怒りを燃やすフィービーやセドリックやポッターの鋭い眼光をよそに、リドルはウィーズリーの娘が疑いを抱いて捨てた日記を、ポッターが拾ってくれて最高に嬉しかったと言った。


「ジニーがハリーのことをいろいろ聞かせてくれたからね。君のすばらしい経歴をだ。君のことをもっと知らなければ、できれば会って話をしなければならないと、僕にはわかっていた」


ポッターを信用させるために森番を嵌めた場面を見せたと暴露したリドルは、自分でさえ秘密の部屋の入口を発見するのに5年もかかったのに、ドジなハグリッドがスリザリンの継承者ではありえないと、誰か1人ぐらい気づくに違いないと思っていたと不満をぶちまけた。

レギュラスは少なくともスリザリン生は、ハグリッドが継承者だと本気で信じていなかったはずだと思ったが、余計な口を挟むとリドルの怒りを買いそうだから言わないでおいた。

ほかの教員と違ってリドルを完全に信用していなかったダンブルドアは、当時の校長のディペットを説得してハグリッドに森番としての職を与え、それからリドルを監視するようになったらしい。

在学中に秘密の部屋を再び開けるのは危険だと判断したリドルは、16歳の自分を日記の中に保存し、いつか誰かに自分の足跡を追わせて、サラザール・スリザリンの崇高な仕事を成し遂げようと目論んだ。

リドルの話を聞いたポッターは勝ち誇ったように、「君はそれを成し遂げてはいないじゃないか」と指摘した。


「今度は誰も死んではいない。猫1匹たりとも。あと数時間すればマンドレイク薬ができあがり、石にされたものはみんな無事、元に戻るんだ」

「まだ言ってなかったかな? 穢れた血の連中を殺すことは、もう僕にとってはどうでもいいことだって。この数ヶ月間、僕の新しい狙いは君だった──」


リドルはポッターが仲間を襲われたらじっとしていられない質だと見抜き、ウィーズリーの娘に自分の遺書を書かせて、ここに下りてきて待つように仕向けたと語った。


「ジニーは泣いたり喚いたりして退屈だったから、フィービーを呼んでおいて正解だったよ。ハリーは知っているのかな? お友達の彼女が特殊な能力を隠していることを」


ポッターは怪訝そうに眉を寄せて、無表情を取り繕うフィービーを見やった。

顔を強ばらせたセドリックの反応を見たリドルは薄く笑ったが、いまはポッターが優先らしく話を元に戻した。


「ハリー・ポッター、僕は君にいろいろ聞きたいことがある」


ポッターは吐き捨てるように、「なにを?」と受け答えた。

愛想よく微笑したリドルは、「そうだな」と言った。


「これといって魔力を持たない赤ん坊が、不世出の偉大な魔法使いをどうやって破った? ヴォルデモート卿の力が打ち砕かれたのに、君のほうはたった1つの傷痕だけで逃れたのはなぜか?」

「僕がなぜ逃れたのか、どうして君が気にするんだ? ヴォルデモート卿は君よりあとに出てきた人だろう」

「ヴォルデモートは僕の過去であり、現在であり、未来なのだ……ハリー・ポッターよ」


静かに答えたリドルはウィーズリーの娘の杖を使って、空中に文字を書いた。


TOM MARVOLO RIDDLE (トム・マールヴォロ・リドル)


リドルがもう一度杖を振ると、名前の文字が並び方を変えた。


I AM LORD VOLDEMORT (わたしはヴォルデモート卿だ)


名前のアナグラムに目を奪われているポッターは、無言の呼び寄せ呪文を使ったリドルに自分の杖を奪われたことに気づいてない。
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