あらがうもの

□秘密の部屋
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〜セドリック視点・続き〜



ハリーとセドリックが点した杖灯りは、トンネルの湿っぽい壁に映る4人の影をおどろおどろしく浮かび上がらせた。

慎重に前進していたハリーが低い声で、「みんな、いいかい」と呼びかけた。


「何かが動く気配を感じたら、すぐ目をつぶるんだ──」


どうしてと質問したセドリックに対し、ハリーは重々しく「秘密の部屋に潜む怪物はバジリスクだ」と答えた。


「何百年も生き長らえた巨大な蛇らしい。その眼からの光線に捕らわれた者は即死するって、ハーマイオニーが調べた本の断片に書いてあった」


魔法省が定めた危険度の最も高い魔法生物リストの中に、バジリスクの名前があった気がする。
魔法生物規制管理部に勤める父のエイモスでさえ、対峙したことすらない伝説の怪物だ。
セドリックは恐怖で混乱した思考を落ち着かせるため、疑問を口に出した。


「怪物の正体は本当にバジリスクなのかな? こういう言い方をするのはよくないけど、襲撃事件で誰も命を落としていないよ」

「僕は今学期あちこちで蛇語を聞いたんだ。それに今回の被害者はみんなバジリスクの目を直視していない」


ミセス・ノリスは床の水たまりに映ったバジリスクを見た。
ロベルタとジャスティンは、太った修道士やほとんど首無しニック越しに。
2人のゴーストはまともに死の光線を浴びたが、2回は死ねない。
コリンはカメラを通して見た。
怪物の正体に気づいたハーマイオニーはペネロピー・クリアウォーターに、どこかの角を曲がるときは最初に鏡を見るようにと忠告したのだろう。
さらにハーマイオニーは、バジリスクは城中を這い巡るパイプを通って移動していたと推理したようだ。

ハリーの話は、ロンが何かを踏みつけて割る音でさえぎられた。

セドリックも杖を床に近づけてよく見ると、小動物の骨がそこら中に散らばっていた。

フィービーとジニーがどんな姿で見つかるか──セドリックは不吉な考えを振り切るように、最後尾についてトンネルのカーブを曲がった。

ロンが掠れ声で「ハリー、あそこに何かある……」と言った。

杖を掲げたセドリックは、先頭に立っていたハリーのところに駆け寄って、行く手をさえぎる大きな物体にじりじりと近寄った。

杖灯りに照らし出されたのは毒々しい鮮やかな緑の抜け殻で、トンネルの床にとぐろを巻いて横たわっていた。脱皮した蛇はゆうに6メートルはありそうだ。

後ろのほうでロックハート先生が腰を抜かしたらしく、ロンが杖を向けて「立て」と命じた。

ロックハート先生はやおらロンに飛びかかって、床に殴り倒した。

ハリーとセドリックが前に出たが、間に合わなかった。

肩で息をしながら立ち上がったロックハート先生は、スペロテープで補修されたロンの杖を握って、輝くような笑みを向けてきた。


「坊やたち、お遊びはこれでおしまいだ! 私はこの皮を少し学校に持って帰り、女の子たちを救うには遅すぎたとみんなに言おう。君たち3人はズタズタになった無残な死骸を見て、哀れにも気が狂ったと言おう。さあ──」

「ステューピファイ!」


セドリックはロックハート先生のおしゃべりをさえぎるように、失神呪文を放った。

話に夢中になっていた先生は盾の呪文で防ぐこともせず、セドリックの呪文を胸に食らって仰向けに倒れた。


「この野郎! バジリスクのエサになっちまえ!」


自分の杖を取り戻したロンは怒鳴りながら、意識のないロックハート先生に蹴りを入れていた。

3人で話し合った結果、折れた杖を持ったロンがほかの先生方が来るまで、気絶したロックハート先生の見張りをすることに決まった。


セドリックとハリーはくねくねと曲がる石の通路を無言で進み、トンネルの終わりにたどり着いた。
固い壁には2匹の蛇が絡みあった彫刻が施され、蛇の目には輝く大粒のエメラルドが嵌めこんであった。

蛇の彫刻に近づいたハリーは咳払いをして、今度は一発で蛇語を口にした。
壁は2つに裂けて絡み合っていた蛇が分かれ、両側の壁がするすると滑るように見えなくなった。

マートルに伝言を頼んだのだが、先生方の救援は間に合わなかったようだ。
セドリックはバジリスクの恐怖に震えながらも、ハリーと共に開かれた秘密の部屋の中に足を踏み入れた。


第14章『スリザリンの継承者』へ

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