あらがうもの

□秘密の部屋
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〜セドリック視点・続き〜



ハリーがドアをノックすると、先生の部屋から響いていた慌ただしい物音が急に静かになった。

ドアを少しだけ開けたロックハート先生は、ハリーが役に立つ情報を提供すると言ったのに、非常に迷惑そうにして渋々3人を中に入れた。

部屋はほとんど片付けられており、開かれたトランクには色とりどりのローブや先生自身の著書などが乱雑に詰めこまれ、大急ぎで荷造りしていた途中だと見て分かった。

どこかへ行くのかとハリーが問うと、ロックハート先生は緊急に呼び出されて仕方なく行かなければと答えた。


「僕の妹とフィービーはどうなるんですか?」


がく然として言ったロンに同意するように、セドリックは防衛術教師を鋭く見据えた。

3人の視線を避けたロックハート先生はひっくり返した引き出しの中の物をバッグに詰めながら、「まったく気の毒なことだ」と言った。

ハリーは信じられないとばかりに声を荒げた。


「闇の魔術に対する防衛術の先生じゃありませんか! こんなときにここから出て行けないでしょう! これだけの闇の魔術がここで起こっているというのに!」

「いや……しかしですね……私がこの仕事を引き受けたときは……職務内容には何も……こんなことは予想だに……」

「先生、逃げ出すっておっしゃるんですか? 本に書いてあるように、あんなにいろいろなことをなさった先生が?」

「本は誤解を招く」

「ご自分が書かれたのに!」

「ちょっと考えればわかることだ。私の本があんなに売れるのは、中に書かれていることを全部私がやったと思うからでね」


ハリーに糾弾されたロックハート先生は、背筋を伸ばして開き直ったように告白した。
ロックハート先生は闇の生物と戦った功績のある魔法使いや魔女を探し出し、話を聞き出してから忘却術をかけ、自分の手柄にしてきたという。


「坊ちゃんたちには気の毒ですがね、忘却術をかけさせてもらいますよ。私の秘密をベラベラそこら中でしゃべったりされたら、もう本が1冊も売れなくなりますからね……」


ロックハート先生が3人に向けた杖を振り上げる直前に、セドリックは杖を抜いて叫んだ。


「「エクスペリアームス!」」


ハリーも杖を出して武装解除呪文を唱えたらしく、ロックハート先生は決闘クラブのときのように、足元から吹っ飛んで壁にぶつかって伸びた。

頭に血がのぼって先生を攻撃してしまったと反省するセドリックをよそに、ロンは空中に高々と弧を描いた先生の杖をキャッチして窓から外に放り投げた。


「そいつ、気絶したんじゃないか?」

「気付け呪文をかければ、意識を取り戻すと思うよ」

「じゃあ、セドリック、そいつに気付け呪文をかけてくれないか? 秘密の部屋の下見役にするから」


ロックハート先生の所業に腹を立てたのか、ハリーは冷徹な指示を出した。

セドリックはほかの先生に知らせたほうがいいのではと提案したが、ロンは苛立ったように「お前が知らせに行けよ」と言って突っぱねた。

一方、ハリーは自分の腕時計に向かって、「シリウス!」と呼びかけた。
すると彼の腕時計から、シリウス・ブラックと思しき低い声が聞こえた。


「ハリー、どうした?」

「僕、これから秘密の部屋に行くよ」

「待て、ハリー、危ない。マクゴナガルに報告するんだ。先走ってはいけない」

「ジニーとフィービーが秘密の部屋に連れ去られた。早くしないと本当に手遅れになってしまうよ」


何か言おうとしていた名付け親との連絡を打ち切ったハリーは、ロックハート先生の机の上に腕時計を置いた。

放っておけば2人だけで秘密の部屋に乗り込むのは目に見えていたので、セドリックはやむを得ず、ロックハート先生に気付け呪文をかけてご同行願った。

驚いたことにハリーとロンが向かった先は、3階の女子トイレだった。
一番奥の小部屋の水槽に座っていた眼鏡をかけた女の子のゴーストは、ハリーと顔見知りらしかった。


「君が死んだときの様子を聞きたいんだ」


ハリーが尋ねるなり、女の子のゴーストはこんなに誇らしく、嬉しい質問をされたことはないという顔になった。
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