あらがうもの

□ジニーの誕生日
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「えーと。予知夢かどうかわかんないけど、ロックハートがホグワーツにいる夢をみたんだよ」

「なぜあの男がホグワーツに? どういう状況だった?」


琥珀色の目を剥いて迫るエイモスを、美しい眉をひそめたモニカが諫めた。


「そんな怖い顔で追及したら、娘に嫌われてしまいますよ。今日はハーマイオニーが遊びに来るのですし……そういえば、フィービー。夜の騎士バスは運転が荒っぽいことを、ハーマイオニーに教えてあげましたか?」

「うん。私は漏れ鍋まで迎えに行くよって言ったんだけどね。ハーマイオニーは魔法界のバスに乗ってみたいって言い張ったんだよ」


ハーマイオニーは暖炉の中を移動するより、暴走バスのほうが確実だと思ったのだろう。
酔いざましの薬を用意しておいたほうがよさそうだ。


そして昼前になった頃、外でバーンという大きな音が聞こえた。

フィービーが勝手口から外に出ると、エイモスのペットを住まわせている小屋の脇に、3階建ての派手な紫色のバスが停まっていた。
フロントガラスの上には金文字で、【夜の騎士バス】と書いてある。
紫色の制服を着た若い車掌が、栗色のボストンバッグを持って地面に飛び降りた。


「ほれ、着いたぜ、嬢ちゃん」


青ざめたハーマイオニーがふらついた足取りでバスから降りた。

車掌は「またのご利用を!」と叫んで車内に戻り、バーンという派手な音と共に夜の騎士バスは影も形もなくなった。


「ハーマイオニー、また会えて嬉しいよ。気分が悪いみたいだね。水を飲む?」


フィービーは急いでハーマイオニーに駆け寄り、ボストンバッグを受け取った。


「……ありがとう、フィービー。驚いただけだから、大丈夫よ」

「ハーマイオニー、いらっしゃい。家に入って休みなさいな」


モニカに促されたハーマイオニーは、弱々しくお礼を言った。
台所で酔いざましの薬と水を飲んだ彼女は持ち直したらしく、改めてあいさつをした。


「お招きいただきまして、ありがとうございます。1週間お世話になります」

「自分の家だと思ってくつろいでちょうだいね。フィービー、ハーマイオニーを来客用寝室に案内してあげなさい」


わかった、と返事をしたフィービーがボストンバッグを持ち上げると、ハーマイオニーは自分で荷物を持つと言った。
具合の悪い子に、重たい物は持たせられない。フィービーの反論を聞いたハーマイオニーは苦笑した。


「フィービーってそこいらの男子より、ずっと格好いいわよね。新入生の女の子のファンが増えるわよ」

「……ごめん。どう反応したらいいのかわからない」


するとハーマイオニーはハンナやスーザンがよく見せる生温かい眼差しになって、「じゃあ話を変えるわ」と言った。


「ハリーが親戚のお家のガーデンベンチを踊らせて、魔法省から公式警告状を受け取ったことは聞いた?」


映画では屋敷しもべ妖精のドビーが魔法で浮かせたデザートを、ダーズリー家に招かれた客人の頭上に落としていたのだが、またしても展開が変わった。

事件にマグル製品が絡んだので、マグル製品不正使用取締局に勤めるロンのパパのアーサーさんが、事態の収拾とハリーの事情聴取に乗り出した。

アーサーさんはハリーの無実を訴えたようだが、魔法不適正使用取締局の役人は、屋敷しもべ妖精がマグルの住宅地にあらわれるなんてあり得ないと一蹴したという。

それを聞いたシリウスは魔法不適正取締局に乗りこんで、ハリーが巻きこまれた事件の再調査をするように訴え、新聞沙汰になっている。

ちなみにハリーは部屋の窓に鉄格子を嵌められて閉じこめられることなく、事件が起きたその日のうちに、シリウスが迎えにきて金獅子荘に向かったらしい。
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