あらがうもの

□学期末パーティ
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「あぁ、ハリー。私たち、あなたがもうダメかと……ダンブルドア先生がとても心配してらっしゃったのよ……」


医務室に入ったハーマイオニーは安堵のあまり、ベッドに横たわるハリーを抱きしめようとした。


「今はハリーをそっとしておいてやってくれ。まだ頭痛が引かないようだから」


ベッド脇の椅子に座るシリウスが片手をあげて、ハーマイオニーを止めた。


「話すくらいなら平気だよ」

「学校中が君の話で持ちきりだよ。本当は何があったの?」


ロンの質問を受けて、ハリーは最後の部屋で起きた出来事を話しはじめた。

ターバンをとったクィレルの後頭部から、蛇に似たヴォルデモートの頭が飛び出ていたとハリーがストレートに言ったとき、ハーマイオニーはたまらず悲鳴をあげた。

フィービーはハリーが例のあの人の名前を平気で連呼するのを聞いて、ぎょっとした。


「クィレルはヴォルデモートの命令で僕を捕まえようとしたけど、手が焼けただれてできなかった。母さんが命がけで僕に護りの魔法をかけてくれたから、ヴォルデモートと魂を分け合う者は僕に触れられないんだ。クィレルに触れられると、僕の額の傷痕がすごく痛んだけど」


ハリーは入学前にリーマスから、母親の護りの魔法のことを聞いて知っていたらしい。
例のあの人と対決したときはいっぱいいっぱいで、護りの魔法のことは忘れていたみたいだが。


「ヴォルデモートが殺せって叫んだのを聞いたとき、禁じられた森でフィービーが僕を守ってくれたことを思い出したんだ。フィービーにもらった護符のこともね」


ハリーは死の呪文をかけようとしたクィレルの顔に、フィービーの護符を貼りつけた。それでもヴォルデモートは祓えなかったので、ハリーは額の傷痕の激痛に耐えながらクィレルにしがみついたようだ。

シリウスは決死の戦いを語るハリーではなく、フィービーを見据えていた。

ロンが護符ってなにと聞いてきたので、フィービーは助かったとばかりに赤毛の幼なじみのほうを向いて話した。


「中国魔法をアレンジして作ったお守りのことだよ。私は前々から、ドラゴンの卵の殻を使う東洋魔法に興味を持っていたんだ。レイブンクローのチョウ・チャンから符術の本を借りられたから、少しでも力になればと思って護符を試しに作って……」


フィービーの言い訳を、シリウスの強い口調がさえぎった。


「ダンブルドアは君の護符がなければ、クィレルは死んでいたと言っていた。君は端からクィレルを助けるつもりで、ハリーに護符を渡したんじゃないか?」


目を見張るハリーたちの視線と、シリウスの険しい眼差しを浴びながら、フィービーは考えるようにして答えた。


「ダンブルドア校長が指摘したのはおそらく、私がクィレルに直接渡した護符のことだと思います。だけど、あのときはスネイプ先生が石を狙っていると思いこんでいたので、クィレルがスネイプ先生の脅しに負けて口を割ったら困ると思ったから、気休めに護符を渡したんです」

「気休めにしては、随分と強力な効果を発揮したようじゃないか?」


皮肉めいた笑みを浮かべて詰問してくるシリウスは、説教するときのレギュラスに似ていた。
なんて言ったら、レギュラスはものすごい勢いで否定するだろうなと思ったら不意に笑いがこみ上げ、フィービーは堪えるために唇を噛んでうつむいた。

するとハーマイオニーがシリウスに向かって、「もうやめて」と言った。
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