あらがうもの

□学期末パーティ
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フィービーは幼い頃から予知夢を見ることを、ダンブルドア校長に打ち明けた。


「それが真実ならば、ミス・ディゴリーは予知夢を見ることを、なぜ今まで伏せていたのじゃろうか」

「それは……先生や友達に話しても信じてもらえないと思ったからです。私の家族でさえ、ストレスのせいで悪夢を見るのだと思っています」

「では、わしがミス・ディゴリーのご両親に会って、君が予知夢を見ることを説明しよう」


フィービーが慌ててその必要はないと言おうとしたとき、ダンブルドア校長の半月眼鏡が光った。


「フィレンツェに聞いた話じゃと、ミス・ディゴリーは罰則を受けたとき、森で遭遇したクィレルに失神呪文を放ったそうじゃな? あれは普通の1年生に使いこなせる呪文ではない。君がクィレルに護符を渡したことも、ヴォルデモートは不審に思ったかもしれぬ」


万が一、とダンブルドア校長は声を落として続けた。


「ミス・ディゴリーの予知能力をヴォルデモートが警戒するようになれば、君のご家族は命の危険にさらされるのじゃ。注意を促しておいたほうがよかろう」


反論の余地がない。
フィービーは家族に事情を説明する手紙を書いてほしいと頼んでみたが、ダンブルドア校長は直接話すと言って譲らなかった。

さらにダンブルドア校長は、「最後にもうひとつ」と言った。


「これはハリーには話していないことなのじゃが……ハリーが守り抜いた賢者の石は、偽物にすり替えられておったのじゃ。そのことに関して、なにか知っていることはないかのう?」


ダンブルドア校長は瞬きせずに、こちらを見つめている。
と思ったら、フィービーの目の前で空き教室がゆらめいて消えた。

開心術をかけられていると察したフィービーは、記憶が浮かんでこないうちにすべての考えを締め出した。


「……いいえ、校長先生。知りません」

「そうか。ミス・ディゴリー、もう行ってよろしい……」


ダンブルドア校長の落胆した声がこだまのように、フィービーの頭の中に響く。


そして次の瞬間、フィービーは女子寮のベッドの上で、人の姿に戻ったレギュラスと向かい合っていた。


ハリーのお見舞いからダンブルドア校長と会った経緯をフィービーが説明したら、顔色を変えたレギュラスが状況を詳しく把握する必要があると言って、開心術をかけてきたのだ。


「ダンブルドア校長の開心術は防げたから、大丈夫じゃない?」

「大丈夫ではありません。ダンブルドアはフィービーが闇の陣営と関わりがあるのではと疑ったから、断りもなく開心術をかけたのですよ」


絶句するフィービーをよそに、レギュラスは言葉に出して考えをまとめていた。


「フィービーが予知能力を悪用して、石を盗もうとしたと疑ったか……あるいはみぞの鏡に映像記録魔法の類がかけてあって、ダンブルドアが私の生存を知ったのか。ダンブルドアの口振りから推察するに、後者の可能性が高いですね」

「いっそのこと、レギュラスがダンブルドア校長の前に出て行けばいいじゃない。ペティグリューを捕獲したことや分霊箱のことを話せば、たぶんアズカバン行きにはならないよ」


するとレギュラスは小馬鹿にするように鼻で笑った。


「愚かな娘ですね。死喰い人の言うことを信じてはいけないと忠告してさしあげたのに、鏡に隠されていた賢者の石が偽物だったと、本気で信じたのですか?」

「レギュラス……たちの悪いおふざけはやめてよ」

「戯れではありません。石と共にポッターの今後の動きがすべてわかる芝居の情報を帝王に差し出せば、私は死喰い人の中で最高の栄誉を得ることができます」


口許に酷薄な笑みを浮かべて語るレギュラスは、いつの間にか抜いた杖をフィービーに向けてきた。
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