あらがうもの
□学期末パーティ
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「さっきも言ったけど、フィービーは禁じられた森で僕を命がけで守ってくれたんだ。そこまでしてくれた友達を信じないなんて、恥ずかしいことだと思うよ」
ハリーに制止されたシリウスは、ショックを受けたように灰色の目を見開いた。
名付け親が絶句した気まずさを紛らわすためか、ハリーは話を変えた。
「ヴォルデモートは自分の家来を、敵と同じく情け容赦なく扱う。いまごろ誰か乗り移る体を探しているだろう」
「例のあの人がいなくなったわけじゃないなら、他の手段でまた戻ってくるんじゃないか?」
怖々と聞いたロンに対し、ハリーは「うん」と答えた。
「ダンブルドアはあいつの狙いを何度もくじいていけば、二度と権力を取り戻すことができなくなるかもしれないって言っていた」
しっかりした声に決意をのせて話すハリーを、シリウスは心配そうに見つめた。
病室に落ちた沈黙を、ハーマイオニーが破った。
「ハリーが守った石はどうするの? 例のあの人がまた狙いに来るかもしれないわよ」
「ダンブルドア先生がフラメルと話し合って、石は壊すことにするみたい。フラメル夫妻は身辺整理をするのに十分な命の水を蓄えているからって」
ハリーの話を聞きながら、フィービーは物思いにふけった。
罠を突破しに行ったことをバジルに説教されたとき、彼は事のついでのように石をすり替えたと白状した。
『命の水と呼ばれる賢者の石を加工すれば、反対呪文がないと言われる死の呪文を跳ね返す護符を作れるかもしれないと考えたのです』
ところが、みぞの鏡に隠されていた賢者の石は偽物だったという。
それを聞いたフィービーは、石をめぐる騒動はいったい何だったんだと虚しくなった。
「ダンブルドアはハリーがこんなことをするように仕向けたんだろうか? だってクリスマス休暇前に、鏡の仕組みをわざわざ説明したじゃないか?」
ロンの発言を聞いた途端、シリウスの目つきが鋭くなった。
眉を吊り上げたハーマイオニーは、怒りをあらわにした。
「もしも、そんなことをしたんだったら……言わせてもらうわ……ひどいじゃない。ハリーは殺されていたかもしれないのよ」
するとハリーは思案顔で「ううん」と答えた。
「そうじゃないさ。ダンブルドアって、おかしな人なんだ。たぶん、僕にチャンスを与えたいって気持ちがあったんだと思う。あの人はここで何が起きているか、ほとんどすべて知っているんだと思う。僕たちがやろうとしていたことを、相当知っていたんじゃないのかな」
シリウスが苦々しげな表情を浮かべたのを知ってか知らずか、ハリーは考えをまとめるように話した。
「僕たちを止めないで、むしろ僕たちの役に立つ必要なことだけを教えてくれたんだ。僕にそのつもりがあるなら、ヴォルデモートと対決する権利があるって、あの人はそう考えていたような気がする……」
「ハリーはまだ1年生なんだぞ。ヴォルデモートと対決する権利なんて、ないほうがいい」
シリウスは断固として言った。
名付け親に意見を否定されたハリーは息をのんだが、強い口調で言い返した。