あらがうもの

□仕組まれた予選
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「どうせマルフォイの父親がチームにも圧力をかけたんだろ」


ハリーは冷ややかに指摘した。

マルフォイは大して身長の変わらないハリーを見下ろすように、尖ったあごを上げた。


「調子に乗るなよ、ポッター。競技場では、ダンブルドアやマクゴナガルは助けちゃくれないんだからな」

「そっくりそのまま返すよ」


フレッドとジョージは険悪な雰囲気をうちこわす陽気な声で、「何はともあれ」と言った。


「フィービー、最年少寮代表女性選手、就任おめでとさん」

「補欠だけどね。チームに入れたのはフレッドのおかげだよ。この箒、すごく飛びやすかった。ありがとう」


双子は同じ私服を着ているので見分けがつかなかったため、フィービーは適当に向かって右側のウィーズリーに箒を返した。

赤毛の彼は褐色の目をぱちくりさせてから、ニヤリと笑った。


「フレッドはそっちだ。俺はジョージ」

「ああ、ごめん。そっくりだから分からなくて」

「冗談だよ。俺がフレッドさ」

「ややこしいことしないで、グレッド」

「グレッドは照れているんだ」

「知ったような口を利くんじゃないぞ、フォージ」


グレッドとフォージ、もといフレッドとジョージが口論を始めた。


ハリーはフィービーを責めるべきか事情を聞くべきか、迷った末に何か言おうとしていたのだが。
怒り心頭のロンが出口に向かったので、ハリーは親友を追いかけた。

ハリーとロンの後ろ姿に嘲笑を浴びせたマルフォイは、フィービーに向き直って言った。


「補欠とはいえ、チームに入れてよかったな」

「ありがと」

「今年もスリザリン・チームが、優勝杯を獲得するのは目に見えているけどな」


マルフォイは皮肉っぽく付け加えてから、背中を向けて立ち去った。

パンジー・パーキンソンは殺し屋のような目つきで、フィービーを睨んできた。

恐ろしい誤解が生じているようだが、パーキンソンより先にハッフルパフの同級生に話をしなくてはいけない。


「フィービー、おめでとう!」


マーサは弾けるような笑顔で、お祝いを言った。

ハンナやスーザン、ジャスティンはあきらかに困惑している。
フィービーがマルフォイと手を組んだ話は、こちらまで届いていたらしい。

選抜に落ちたアーニーは、納得いかないと言わんばかりのしかめ面だ。

フィービーは予選に介入した理由から、説明することにした。


「ハリーだけ特別措置を受けて寮代表選手になれるのは、ずるいと思ったんだ。マルフォイに協力を仰いだことが後ろめたくて、今まで言えなかったけど。黙っていてごめんね」


ハンナとスーザンは視線で会話していたが、マーサはすぐに受け答えた。


「フィービーがハリーのことを、ずるいと思っていたのは意外だったわ。仲良さそうに見えたから」

「でも、仲がいいから許せないってこともあるわよね」

「そうそう。セドリックは3年生になるまで待ったんだし」

「もうすぐセドリックのトライアルが始まりますよ。みんなで応援しましょう」


むすっとしたアーニーは、「正しく忠実なハッフルパフ生らしいやり方とは言えないけど」と前置きして言った。


「僕も正直、ハリーの特別措置は不公平だと思っていたんだ。ハリーは正規のトライアルを受けたわけじゃないからね」


アーニーはしぶしぶ受け入れてくれたようだが。
離れたところでほかの脱落者とひそひそ話をしているスミスは、説得するだけ骨折り損だろう。

セドリックは最速でスニッチをつかみ、念願のシーカーに決まった。

兄の笑顔がいまいち晴れなかったのは、妹がマルフォイと手を組んだことを気にしているからだろうと思うと、フィービーは申し訳なくなった。



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