あらがうもの

□仕組まれた予選
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クリーンスイープにまたがったフィービーは、競技場の中央に向かって飛んだ。

チェイサーのジェローム・ロイスと向かい合う。6年生のジェロームはかなりの長身だ。

手足のリーチで負けている分、フィービーはよりすばしこく動き回らないといけない。


「位置について。よーい」


真下にやってきたタリーザが合図と同時に、真紅のクアッフルを高く放り投げた。

前屈みになって飛びだしたフィービーは、クアッフルをつかんだ。
ジェロームは長い手を伸ばしてクアッフルを奪おうとしてきたので、フィービーはS字飛行でかわす。

一直線にゴールを目指すフィービーに、大柄なヒューが突っ込んできた。
フィービーはひょいと急降下してヒューをかわし、すれ違ったオスカーにクアッフルをパスする。

オスカーはビーター仲間のルース・シールズが打ってきたブラッジャーを避けて、ゴールに向かっていたフィービーにクアッフルを戻した。

キーパーのグレン・フィルポットは、3つあるゴールポストの真ん中に浮かんでいる。

フィービーが右端のゴールに突き進むと、グレンは守備を右側に寄せた。
それを見たフィービーは、クアッフルを左手に持ち替えて、左側のゴールを狙った。

フェイントをかけられたことに気づいたグレンは、すぐさま左に飛びついた。

フィービーは左端のゴールを見据えたまま左腕を振りかぶり、進行方向にある右側の輪の中にめがけてクアッフルを投げた。


「やるな! 1年生の飛びっぷりとは思えないぜ」


リーのよく響く声が聞こえた。
歓声にも煽られたフィービーは調子をあげて、10回連続でゴールを抜いた。


タリーザは1年生の中でもっともゴール回数が多かったフィービーを、チェイサーの補欠に決めた。


「フィービーは女の子だから、みんな手加減したんだ」

「カーライルは僕のときみたいな体当たりを、ディゴリーに仕掛けなかった!」

「うちのチームメイトには、下級生の女の子が相手だからといって、手を抜くような間抜けはいない。これで1年生のトライアルは終わりだ」


タリーザはきっぱりした口調で、脱落者の不平を押さえこんだ。

フィービーがフレッドに箒を返すために観客席に向かうと、セドリックが駆け寄ってきた。
困惑したように眉間にしわを寄せた兄の様子は、お祝いを言いにきたという感じではない。


「ドラコ・マルフォイが観客席で話しているのが聞こえたんだ。フィービーがマルフォイに頼んで、1年生も予選に出られるように仕向けたというのは本当かい?」


マルフォイがハッフルパフの予選を見に来るなんて予想外だ。

それより、マルフォイに口止めしておくべきだった。
フィービーは後悔しながら歯切れ悪く答えた。


「本当だよ」

「父さんがマルフォイ家は黒い噂が絶えないと言っていただろう。返せない恩義を作るものじゃないよ」


マルフォイの手を借りる狡猾なやり方を咎められると思ったのだが、セドリックは真剣に妹を心配していた。

自分を恥じてうなだれたフィービーが「うん」と返事をしたとき、タリーザがシーカー選抜を始めると宣言した。

コメットを手にしたセドリックは、急いで競技場に向かった。

予選を遅らせた原因を作ったことに後ろめたさをおぼえていたフィービーは、兄に頑張ってと声をかけることができなかった。


「フィービーの裏切り者! フレッドの箒を返せ!」


観客席に着くと、真っ先にロンが噛みついてきた。

近くにいたマルフォイは鼻を鳴らして反論した。


「ポッターのほうが卑怯だろう。マクゴナガルは職権濫用して、ポッターをシーカーにゴリ押ししたんだからな」

「マルフォイに卑怯とか言われたくないね!」


怒りで真っ赤になったロンに対し、「そんなことないわ」と甲高い声が言い返した。
スリザリンの気の強そうな1年生女子、パンジー・パーキンソンだ。


「スリザリン・チームは欠員がいなかったから、正選手をまじえて飛行能力をテストするトライアルを行ったわ。ドラコは上級生を飛び負かして、シーカーに決まったのよ!」
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