あらがうもの

□仕組まれた予選
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「マクゴナガル先生が特別措置について話してくれたよ。ところでポッター、箒は何型かね?」

「ニンバス2000です。実はマルフォイのおかげで、自分の箒を持てるようになりました」


ハリーは笑いを堪えながら答えた。

フリットウィック先生の好反応に当惑していたマルフォイは、怒りを剥き出しにした。

従甥の感情に呼応するように、足下にいるバジルがフーッと唸る。


マルフォイの横をすり抜けたハリーたちは、階段を駆け上がった。

近くに来ていたハーマイオニーが厳しい面持ちで、ハリーとロンを追いかけた。
階段の上のほうで馬鹿笑いする彼らは、マルフォイに仕返しを果たして有頂天になっているから、彼女の苦言に耳を貸さないだろう。


フィービーは地下のスリザリン寮に向かうマルフォイを呼びとめた。


「寮に戻って泣き寝入りなんて、マルフォイらしくないね」

「僕を馬鹿にしているのか!」

「お馬鹿さんはハリーたちのほうだよ。ほかの1年生や、予選を受けるために何年も待って練習してきた生徒の気持ちを、考えてないんだから」


朝食をとり終えた生徒が続々と大広間から出てきたので、フィービーは外に出ようと提案した。

マルフォイは疑うようにフィービーを見ていたが、クラッブやゴイルを引き連れてついてきた。


「ディゴリーはポッターと仲がいいんじゃないのか?」

「仲はいいけど、なんでもかんでも受け入れられるわけじゃないよ。ハリーだけ特別措置で寮代表選手になれるなんて、ずるいと思わない?」

「思わないほうがおかしい」

「マルフォイのそういうところは好きだよ」

「なっ……訳のわからないことを言うな!」


マルフォイは青白い頬をピンクに染めて怒った。

男の子なのに可愛らしい反応だなと思ったが、フィービーは頭を切り替えて、「真面目な話をするね」と言った。


「規則を曲げてハリーを正選手にしたなら、ほかの1年生にも機会を与えなきゃ不平等だよ。特別措置を伏せておくのは、アンチハリー派の不満が出ないようにするためとしか思えない」


するとマルフォイは薄い唇の端を持ち上げた。
本人は悪い笑みを浮かべているつもりだろうけど、地が美少年だから輝いて見える。


「僕を焚きつけて、スネイプ先生に直訴させるつもりか?」

「規則を曲げたのは校長先生だと思うから、スネイプ先生が抗議しても却下されそう。だからマルフォイのパパにお願いして」


フィービーは見えてきたふくろう小屋を指さした。


「いいだろう。僕の父上はホグワーツの理事だ。ポッターだけ特別措置を与えられたと父上に報告すれば、他寮の1年生にも正選手になる権利を与えるよう、理事会にかけあってくださる」


息子から報せを受けたルシウス・マルフォイは、迅速に動いたらしい。


翌朝、ダンブルドア校長は新たなお知らせを発表した。
クィディッチ予選は一時延期。
今年度に限り、1年生も予選に参加できるよう規則を変更。


「グリフィンドール以外の寮は1年生の中から必ず1人、選手を選出すること」


校長の決定を聞いた2年生以上の生徒は、口々に不満を言った。

今日に向けて調整してきたセドリックは、ショックを受けた顔をしている。

バジルの発案とはいえ、仕向けたのは自分なので物凄い罪悪感だ。


「僕も予選に出るぞ! ハッフルパフ初の最年少シーカーになってやる」


スミスの発言を聞いたフィービーは、顔をこわばらせた。

セドリックがスミスに負けるなんてあり得ないと思うけど、スミスが補欠選手としてチームに入ったら、兄に何かといちゃもんをつけそうだ。
そう考えたフィービーは、自分とバジルのせいで生じた特別枠を潰そうと決意した。

フィービーの膝の上にいたバジルは、表情を変えたフィービーを見上げて、満足そうに喉を鳴らしていた。
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