あらがうもの
□仕組まれた予選
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ハッフルパフ・チームの選抜は日曜の午後に行われた。
午前中にレイブンクロー・チームの選抜があったせいか、お菓子や軽食を持ちこんで見物する生徒で観客席が埋まっていた。
「すごい人気だね、セド兄」
セドリックに声援を送るのは主にハッフルパフの女生徒だけど、レイブンクローとグリフィンドールの女子生徒もちらほら見受けられる。
「フィービーを応援している人も多いじゃないか。その箒だって、フレッド・ウィーズリーに借りたんだろう?」
苦笑したセドリックの言葉にかぶさるように、フレッドとジョージの大声が響いた。
「フィービー、頑張れ!」
「俺の箒で、兄貴のディゴリーを飛び負かしてくれ!」
「なんでアンジェリーナが観客席にいるんだよ!」
悲痛な叫びをあげたのは、ウィーズリーツインズの親友のリー・ジョーダンだろう。
アンジェリーナ・ジョンソンはウィーズリーの双子と同じく、グリフィンドール・チームの選手だから敵情視察を兼ねているはずだ。
アンジェリーナがセドリック狙いというわけではない……と思う。
「集合!」
凛とした声で号令をかけたのは、6年生の女子生徒でキャプテンを務めるタリーザ・ホープだ。
彼女は普段おろしている亜麻色の髪を三つ編みにして、カチューシャのように頭のまわりに巻きつけていた。
「よし、集まったね。まずは1年生からテストするよ。とりあえず競技場を1周してもらおう」
「そんなの飛行訓練でやったよ」
横やりを入れたスミスは、同寮の上級生から借りたクリーンスイープ7号を持ってきていた。
タリーザは意にかけない口調で、「そうかい」と言った。
「じゃあ、飛行訓練の成果を見せてもらうよ。3人1組になって飛ぶんだ」
フィービーは意図的にスミスから距離をとったので、アーニーやオラフ・ラングトンと飛行テストを受けることになった。
フレッドが貸してくれたクリーンスイープ5号は型こそ古いけど、箒の尾はきちんと整えられて、しっかり手入れしてあった。
昨日の夕方にフィービーはフレッドの箒に試乗してみたが、エイモスから譲り受けたスイフトスティックより速くて乗りやすかった。
フィービーは型落ちしたニンバスを上級生から借りたアーニーを引き離して、トップで1周し終えた。
オラフは学校の箒が暴れたせいで、ゴールポストに激突してしまった。
ほかにも箒から落下する者や、衝突事故が相次いだ。
次のトライアルに進めた1年生は、フィービーを含めた5人だった。
「今度は1人ずつ、ミニゲーム形式でトライアルをする。うちのチームメイトの1人と組んで、チェイサーの攻撃をかわしながら、クアッフルでゴールを決めてもらう。本番と同じく競技場にブラッジャーを放すけど……」
「待った。僕はシーカー希望なんだ。チェイサーじゃない」
またもやスミスが話の腰を折った。
するとタリーザの後ろに控えていた、上級生男子がずいと前に出た。
赤褐色の髪を短く刈りこみ、屈強な体格をしている5年生だ。
「キャプテンの話を最後まで聞けないやつは、こっちからお断りだ」
「ヒュー、そのくらいにしてやりなよ。相手は入学したばかりの1年生だ」
聞き分けのない子ども扱いされたスミスは、屈辱で真っ赤になりながらも口を閉ざした。
筋骨隆々なヒューが実力行使に出たら、敵わないと思ったのだろう。
トップバッターでトライアルを受けたスミスは、ヒューの容赦ない体当たりを受けて、箒から落っこちそうになっていた。
「よろしく、フィービー」
赤みがかかった金髪をひとつに結んだ3年生が声をかけてきた。
フィービーと組むのは、セドリックの友人のオスカー・サマービーだ。
オスカーは本来ビーターだが、タリーザを抜いた2名のチェイサーが妨害役としてトライアルに参加しているため、ビーターの2名が交代で1年生のペアになっていた。
「こちらこそよろしく、オスカー」