あらがうもの

□飛行訓練と三頭犬
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セドリックは1週間後の選抜に向けて、毎日のように自分の箒のコメット260を持って城を出ていた。

夕方の練習につきあってほしいと兄に頼まれたので、フィービーはもちろん了解した。


「ありがとう、フィービー。今までファーガスたちに頼んでいたんだけど、宿題が片づかないって言われたんだ」

「セド兄は宿題終わっているの?」


セドリックはにっこり笑って、「もちろん」と答えた。

たしか兄は3年生から始まる選択科目は、魔法生物飼育学、占い学、数占い学、マグル学を受講しているはずだ。

バジルことレギュラスは、4科目も選択してクィディッチの練習をこなすのは、相当きついと言っていた。
無理をしていないだろうかとフィービーが兄を案じていたら、セドリックが先に訊ねてきた。


「フィービー、ホグワーツには慣れてきたかい?」


兄と顔を合わせたときは挨拶しているけど、ゆっくり話す機会は少ない。
セドリックは選抜に向けた練習や、新しい時間割でごたついているのに、妹の様子を気にかけてくれていたようだ。


「授業はおもしろいけど、お城の中が迷路みたいでちょっと大変」

「通りかかったゴーストや絵画に道を聞くのも手だよ。必ず答えてくれるとは限らないけどね」


話題は水曜日から始まる飛行訓練に移った。ハッフルパフはレイブンクローと合同だ。

訓練の日が待ちきれない生徒たちはひっきりなしに、クィディッチの話をするようになった。


「ジャスティンはクィディッチの得点方法には偏りがあるから、団体競技じゃないって言うんだよ。そしたらアーニーが怒って、1つしかないボールを走って追いかけ回すラグビーのどこが面白いのかわからないとか言い返したから、大論争になっちゃってさ」

「僕らが初めて飛行訓練を受けたときも、マグル生まれの子と魔法族育ちの子が口論していたよ。実を言うと、僕もマグル界のスポーツの面白さが理解できなかったんだけど、マシューにサッカーのルールを教えてもらってみんなでやってみたら楽しかったよ」


セドリックが話した平和的な解決法を同級生に提案したいが、確実にスミスが横やりを入れてくるだろう。

スミスは飛行術に自信があるらしく、子どもの頃はいつも箒に乗って、年上の親戚とミニゲームをしていたんだと自慢話をした。


自慢をするのはスミスだけではない。

スリザリンのテーブルではマルフォイが大きな声で、1年生が寮代表選手になれないなんて残念だと聞こえよがしに不満を言った。

マルフォイの輝かしい飛行体験談は毎回必ず、マグルの乗ったヘリコプターを危うくかわしたところで終わっていた。

ヘリコプターを操縦していたマグルに見られて国際機密保持法に抵触したはずだが、マルフォイの父親が金と権力で、息子の不祥事を握りつぶしたのだろう。

ちなみにロンがハンググライダーと接触未遂事故を起こしたときは、アーサーさんが方々に頭を下げる羽目になったと聞いている。


セドリックとあれこれ話しているうちに、クィディッチ競技場に到着した。
国内のスタジアムで観戦したことはあるけれど、ピッチに立つのは初めてだ。

フィービーは高々とせりあがった観客席をぐるりと見渡した。いまは無人なのに胸が高鳴る。
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