あらがうもの

□飛行訓練と三頭犬
5ページ/7ページ

テーブルに向かう途中ですれ違ったマルフォイは、悪だくみしていそうな表情を浮かべていた。

不穏な空気を感じつつ、フィービーはロンと話していたハリーに声をかけた。


「やっほう。ハリーが飛行訓練で活躍したことは、噂になってるよ。ハリーの飛行術の才能は父親譲りかな?」

「なんでフィービーが僕の父さんのことを知ってるの?」


フィービーは先日確かめたことを、ハリーに伝えた。


「トロフィー・ルームで、ジェームズ・ポッターの名前が刻まれた盾を見つけたんだ。20年くらい前にグリフィンドール生だったポッターがほかにいなければ、ハリーのお父さんで間違いないと思ったんだけど」


バジルことレギュラスが忌々しそうに話したところによると、ジェームズ・ポッターはグリフィンドール・チームのチェイサーだったという。

グリフィンドールのシーカーが決勝戦に出られなくなったので、ジェームズ・ポッターが代理シーカーに選ばれて、チームを優勝に導いたシーカーとして名を残したようだ。


「僕の父さんの盾が、トロフィー・ルームにあるの? ちょうどいいや。今夜見に行こう」

「今夜見に行くってどういうこと?」

「ハリーはさっき、マルフォイに決闘を申し込まれたんだよ。僕がハリーの介添人で、マルフォイはクラッブだ」

「…………ハリーとマルフォイが決闘? しかもロンがハリーの介添人?」

「なんだよ。僕が介添人じゃ負けるって言うのかよ」


ロンは顔をしかめて言い返してきた。

予想外の展開にやや混乱していたフィービーは、首を横に振って否定した。

足下にいるバジルをうかがうと、黒猫は後ろ脚で耳を掻いていた。
いま聞いた言葉が信じられないのか、単なる耳のお手入れなのか判別できない。


「そういえば、ロンが僕の介添人ってどういうこと?」

「介添人っていうのは、君が死んだらかわりに僕が戦うという意味さ」


ハリーは魔法使いの決闘を知らなかったらしく、興奮した表情が泡のように消えた。

ロンは慌てて、「死ぬのは本当の魔法使い同士の本格的な決闘の場合だけだよ」と言い添えた。


「君とマルフォイだったらせいぜい火花をぶつけあう程度だよ。2人とも、まだ相手に本当のダメージを与える魔法なんて使えない。マルフォイはきっと君が断ると思っていたんだよ」


バジルはあざ笑うような眼差しをロンに向けた。
どうやらマルフォイはハリーたちを罠にはめるため、決闘を持ちかけたようだ。


「杖を振ってもなにも起こらなかったら、糞爆弾とかを使ってもいいのかな?」

「もちろんさ。僕はクラッブの鼻にパンチを食らわせてやる」

「君たち、それは決闘じゃなくて単なる乱闘だから」


フィービーがあきれ声を出したとき。

しかめ面のハーマイオニーが近づいてきて、「ちょっと失礼」と言った。
決闘の話はすべて、真面目な彼女に筒抜けだったらしい。


「夜に校内をうろうろするのは絶対にダメ。もし捕まったらグリフィンドールが何点減点されるか考えてよ。それに捕まるに決まってるわ。まったくなんて自分勝手なの」

「まったく大きなお世話だよ」

「バイバイ」

「ちょっと、その言い方はあんまりじゃない?」


フィービーは無礼な態度をとった、ハリーとロンを注意した。

肩を怒らせたハーマイオニーはすでに立ち去っていた。

あの様子ではとてもじゃないが、ハリーたちをトロフィー・ルームまで導いてくれそうにない。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ