あらがうもの
□飛行訓練と三頭犬
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テーブルに向かう途中ですれ違ったマルフォイは、悪だくみしていそうな表情を浮かべていた。
不穏な空気を感じつつ、フィービーはロンと話していたハリーに声をかけた。
「やっほう。ハリーが飛行訓練で活躍したことは、噂になってるよ。ハリーの飛行術の才能は父親譲りかな?」
「なんでフィービーが僕の父さんのことを知ってるの?」
フィービーは先日確かめたことを、ハリーに伝えた。
「トロフィー・ルームで、ジェームズ・ポッターの名前が刻まれた盾を見つけたんだ。20年くらい前にグリフィンドール生だったポッターがほかにいなければ、ハリーのお父さんで間違いないと思ったんだけど」
バジルことレギュラスが忌々しそうに話したところによると、ジェームズ・ポッターはグリフィンドール・チームのチェイサーだったという。
グリフィンドールのシーカーが決勝戦に出られなくなったので、ジェームズ・ポッターが代理シーカーに選ばれて、チームを優勝に導いたシーカーとして名を残したようだ。
「僕の父さんの盾が、トロフィー・ルームにあるの? ちょうどいいや。今夜見に行こう」
「今夜見に行くってどういうこと?」
「ハリーはさっき、マルフォイに決闘を申し込まれたんだよ。僕がハリーの介添人で、マルフォイはクラッブだ」
「…………ハリーとマルフォイが決闘? しかもロンがハリーの介添人?」
「なんだよ。僕が介添人じゃ負けるって言うのかよ」
ロンは顔をしかめて言い返してきた。
予想外の展開にやや混乱していたフィービーは、首を横に振って否定した。
足下にいるバジルをうかがうと、黒猫は後ろ脚で耳を掻いていた。
いま聞いた言葉が信じられないのか、単なる耳のお手入れなのか判別できない。
「そういえば、ロンが僕の介添人ってどういうこと?」
「介添人っていうのは、君が死んだらかわりに僕が戦うという意味さ」
ハリーは魔法使いの決闘を知らなかったらしく、興奮した表情が泡のように消えた。
ロンは慌てて、「死ぬのは本当の魔法使い同士の本格的な決闘の場合だけだよ」と言い添えた。
「君とマルフォイだったらせいぜい火花をぶつけあう程度だよ。2人とも、まだ相手に本当のダメージを与える魔法なんて使えない。マルフォイはきっと君が断ると思っていたんだよ」
バジルはあざ笑うような眼差しをロンに向けた。
どうやらマルフォイはハリーたちを罠にはめるため、決闘を持ちかけたようだ。
「杖を振ってもなにも起こらなかったら、糞爆弾とかを使ってもいいのかな?」
「もちろんさ。僕はクラッブの鼻にパンチを食らわせてやる」
「君たち、それは決闘じゃなくて単なる乱闘だから」
フィービーがあきれ声を出したとき。
しかめ面のハーマイオニーが近づいてきて、「ちょっと失礼」と言った。
決闘の話はすべて、真面目な彼女に筒抜けだったらしい。
「夜に校内をうろうろするのは絶対にダメ。もし捕まったらグリフィンドールが何点減点されるか考えてよ。それに捕まるに決まってるわ。まったくなんて自分勝手なの」
「まったく大きなお世話だよ」
「バイバイ」
「ちょっと、その言い方はあんまりじゃない?」
フィービーは無礼な態度をとった、ハリーとロンを注意した。
肩を怒らせたハーマイオニーはすでに立ち去っていた。
あの様子ではとてもじゃないが、ハリーたちをトロフィー・ルームまで導いてくれそうにない。