あらがうもの
□隠れ穴へ
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「これまで何年も、部から部へとたらい回しにされて、役に立つというより厄介者だし……しかし、それでもバグマンはバーサを探す努力をするべきですよ。それなのに、バグマンは笑うばかりで、バーサはたぶん地図を見間違えて、アルバニアではなくオーストラリアに行ったのだろうって言うんですよ。しかし」
言葉を切ったパーシーは大げさにため息をつき、ニワトコの花のワインをグイッと飲んだ。
「僕たちの国際魔法協力部はもう手いっぱいで、他の部の捜索どころではないんですよ。ご存知のように、ワールドカップのすぐあとに、もう1つの大きな行事を組織するのでね」
パーシーはもったいぶって咳払いをすると、テーブルの反対端に座っているハリーたちのほうを見た。
「お父さんは知っていますね、僕の言っていること。あの極秘のこと」
聞こえよがしに声を大きくしたパーシーの発言を受けて、ロンはまたかという顔になった。
「パーシーのやつ、仕事に就いてからずっと、なんの行事かって僕たちに質問させたくて、この調子なんだ。厚底鍋の展覧会かなんかだろ」
ウィーズリー家の三男がほのめかしているのは、三大魔法学校対抗試合のことだろう。
それより気になったのは、魔法ゲーム・スポーツ部に勤めるバーサ・ジョーキンズの失踪事件だ。
上司のルード・バグマンが真剣に受け止めていないからまだ公になっていないけど、本格的な調査に早く乗り出したほうがいいと思う。
バーサが姿を消したアルバニアは、弱体化した例のあの人が潜伏していた土地だ。
これはハリー経由で聞いた、ダンブルドア校長が掴んだ情報なので間違いないだろう。
「フィービー、どうしたんだ?」
隣の席に座ったセドリックが、フィービーの顔をのぞきこんできた。考えこんでいるのを察知されたようだ。
「えーと……パーシーが言っている極秘のことって、何なのかなって」
ロンが「おい、よせ」と制止してきたけど、耳ざとく聞き取ったパーシーが素早く反応した。
「魔法省が解禁するまでは機密情報だから、残念だけど詳しくは言えない。だけど、期待しておいてくれ。その大きな行事を準備するために、国際魔法協力部と魔法ゲーム・スポーツ部が、数ヵ月も骨身を惜しまず尽力してきたんだ。バグマンは仕事ができる人間とは言えないから、ワールドカップ同様、国際魔法協力部がほとんど手配したと言っても過言ではない──」
「厚底鍋で殴りあう国際試合でも開かれるのか?」
双子の片割れが大きな声でパーシーの演説の腰を折ると、どっと笑い声があがる。
笑われたパーシーは真っ赤になって怒り、モリーさんはたしなめるように双子の息子を見た。
庭が暗くなってきたので、アーサーさんが魔法でロウソクを出した。
その灯りの下で食べた、モリーさん手作りのストロベリー・アイスクリームは、甘くてほんのりと酸味が効いて素晴らしくおいしかった。
みんながデザートを食べ終わるころには、夏の蛾がテーブルの上を低く舞い、芝草とスイカズラの香りが暖かい空気を満たしていた。
フィービーのお腹は満たされていたけど、バーサの失踪事件が引っかかって、心から満足感に浸ることはできなかった。